第78章 一鸣驚人

おじさんは率直な人で、自分の状況を朝比奈初たちに話した後、生活の辛さについては特に不満を漏らすことはなかった。

この感覚に、初は深く共感した。

特におじさんが十数年間海の上で漂流してきた経験を語るとき、初は自分が故郷を離れて過ごした日々を思い出した。

おじさんは軽くため息をついた。「この海の生活は確かに苦しいけど、それでも日々を続けていくしかないんだ」

彼には他の選択肢がなく、この海から離れることもできなかった。

初は長い間黙っていたが、好奇心から尋ねた。「陸に家はあるんですか?」

おじさんは茶碗を持ち上げて一口ご飯を食べ、初の質問を聞いて首を振った。ご飯を飲み込んでから、彼は言った。「船が漂う場所が、俺の家さ」

「私もそうです」初は穏やかに微笑んだ。「私がいる場所が、私の家です」

初のこの言葉に、配信を見ている視聴者たちは少し困惑した。

【うわぁ!朝比奈さんは漁師さんを慰めているの?それとも自分の話をしているの?前者であってほしいよぉ】

【なんでいきなりこんな感動的なものを見せるんだよ、地方から上京してる身としては辛いわ】

【ああ、私がいる場所が私の家っていう言葉、心に刺さる。これが孤独と自由を大切にする感覚なのかな】

【私たちは皆、生活のために奔走している。この回の共感性が強すぎる】

【誰にでも物語がある。でも時には心を静めて語るのではなく、ただ聞き手になって、他人の遠い地からの物語を聞くことも、一種の楽しみではないだろうか】

【そうだね、どんな生活でも続けていくしかない。楽しい一日も辛い一日も同じ一日なら、楽しく過ごす方を選びたいよね】

長谷川一樹は横に座って全く会話に加われなかった。

初がその言葉を言い終えた後、彼は好奇心から顔を上げ、彼女に視線を向けた。

なぜか一樹は突然、彼女に対して見透かせない感覚を抱いた。

おそらく初が普段は自由奔放に振る舞っているからこそ、急に感傷的な一面を見せたことに驚いたのだろう。

個人的な背景について大まかに話し終えると、おじさんも食事を終え、船内を案内してくれた。

ドローンが入れないため、一時的に機材を変更して出演者自身がカメラを担いで中に入ることになった。

スタッフは配信機材を一樹に手渡し、彼に一時的なカメラマン役を任せた。

一樹が船に戻り、おじさんについて船内に入った。