第145章 自分を定義できない_2

長谷川一樹は冷たく彼に返した。「これは安全運転というものだ」

九十九聴は外を見て、二隻のボートの距離はまだ大丈夫そうだった。あのボートはまっすぐに進んでいて、一樹のように停止して道を譲るようなことはしていなかった。

「見てあげたけど、距離は安全だよ」

しかし一樹はまだ動き出さず、あのボートが完全に通り過ぎてから初めてボートを前進させた。

「私を信じてないの?」聴は目を見開いて、少し傷ついた様子だった。

【彼はあなたを信じていないんじゃなくて、自分の技術を信じていないんだよwwww】

【一樹があそこに立っているだけでも十分勇敢だよ、そんなに高い要求しないであげて】

【初心者だからね、こういう状況に遭遇したら普通だよ。私も免許取ったばかりの頃、運転中にこんな状況になったら怖かったもの】

【私だけ、彼らが第2回のボート漕ぎの時より上手くなったと思う?】

帰港して観光客が安全に岸に上がった後、朝比奈初たちも上がってきた。

先ほどのボートの観光客に対して、初は心から言った。「皆さんの信頼に感謝します。私たち初心者のボート漕ぎを見ても全く動揺せず、今回の水上ツアーはここまでとなります。これからもこちらで楽しい時間をお過ごしください」

親切な観光客が答えた。「とても上手に漕いでいましたよ。全然初心者には見えませんでした」

一樹のこの3回の進化の歴史は、番組を見た人なら彼の真実と、彼が変わってきた過程を目の当たりにしたはずだ。

その場にはおそらく生放送を見た人も多く、一樹に対する「お坊ちゃま」という呼び名がすぐに飛び出した。「お坊ちゃま、朝比奈さんの言うことを聞いて、ちゃんと成長してね」

一樹:「……」

誰かが叫んだ。「朝比奈さん、あなたは万能すぎて、もう止められません!」

みんなが思い思いのことを言い、まるでファンミーティングのような雰囲気だった。

初:「そんなキャラ設定しないでください。私はただの平凡で、なぜか自信過剰な女性に過ぎませんから」

【つまり……朝比奈さんは自分が「普通の自信過剰女子」だと言いたいの?】

【初めて見たわ、こんな自己紹介。しかも「普通の自信過剰女子」をそんなにリラックスして言うなんて】

【ははは、最初は朝比奈さんの返事が普通だと思ったけど、前のコメント見たら、確かに朝比奈さんには少し自信過剰な部分があるかも】