実は篠田佳子の心の中もかなり矛盾していた。
適切な脚本が見つかるまで、彼女はバラエティ番組の収録を続けたいと思っていた。この機会を利用して自分の知名度を維持したかったのだ。
しかし今や彼女と篠田佳織の関係はますます悪化しており、今後の収録がどうなるか分からなかった。
佳子はリップをバッグに戻し、顔を上げて警戒するように彼を一瞥して、不思議そうに尋ねた。「急にそんなこと聞いて、どうしたの?」
表向きは奥寺光が彼女の味方をしているように見えても、彼の心は多少なりとも母親寄りだった。問題が起きるたびに、光は彼女をなだめ、母親に少し譲るように言うのだった。
突然バラエティ番組の終了について聞かれ、佳子はそれがそう単純な話ではないと感じていた。
光は鼻先を軽く撫でながら、前方に視線を落とし、青信号が点いたのを見ると、すぐに前の車に続いて直進し、口を開いた。「いや、ただ聞いてみただけだよ。佳織さんの彼氏が来たから、このバラエティ番組が二人の関係の邪魔になるんじゃないかと心配してさ」
「邪魔にはならないでしょ。二人は2、3年付き合ってるし、今回帰ってきたのは両親に結婚の話をするためじゃないかな」
光は軽く「うん」と返し、続けた。「結婚するつもりなら、準備することも多いだろうし、佳織さんにはまだバラエティ番組を撮る時間があるのかな?」
「なんだか本質をずらしてる気がするんだけど」佳子は、これが彼がいつも言いそうな言葉には思えなかった。今夜このトピックを持ち出すのは、どう見ても意図的に思えた。
佳子は体を横に向け、目に疑問の色を浮かべながら眉をひそめて尋ねた。「お母さんが何か言ったの?」
あの日、彼女と姑は佐藤夫人の誕生日パーティーに出席し、帰り道で出産と復帰の話になった。佳子は姑が彼に何か言ったのではないかと思った。
そうでなければ、光が今夜このような遠回しな言い方をするはずがなかった。
「母さんが何を言ったって?君が疲れすぎるのを心配してるだけだよ。バラエティ番組が早く終われば、君もゆっくり休めるじゃないか」
「休む必要なんてないわ」佳子はこの時、鬱憤を溜めていた。彼女は顔を窓の方に向け、ガラス窓に映る自分の姿を見つめながら、不満げに言った。「あなたのお母さんは強引すぎるわ。同じ屋根の下で暮らすのは本当に息苦しい」