トニーは満足げに言った。「では、スタイリングに行きましょう。」スタイリングが終わって服を着替えれば、完璧だ。
田中純希は大人しく椅子に座り、トニーに髪をセットしてもらいながら、退屈そうに山崎翔に尋ねた。「私のスマホはどこ?」
翔はぶっきらぼうに答えた。「没収した。パーティーでの第一のルールはスマホを見ないこと、これはマナーだ。」今彼女にスマホを渡すわけにはいかない、渡辺健太はきっと電話を鳴りやませていないだろう。
純希は小声で文句を言った。「今だけちょっと誰か私を探してないか見たいだけ。」クライアントからのメッセージもチェックしなきゃ!
「誰もお前なんか探してないよ。没収したって言っただろ、パーティーが終わったら返すさ。」
純希はこの問題で翔とこれ以上言い争いたくなかった。時計を見ると既に8時半だ。あと3時間我慢すれば良いだけだ。
そこで彼女はもう彼に尋ねるのをやめ、静かにトニーにメイクをしてもらうのを待った。
40分後、純希のスタイリングがついに完成した。トニーは彼女の雰囲気はナチュラルメイクが似合うと言い、気品のある美しさが際立ち、パーティーで間違いなく目を引くだろうと太鼓判を押した。
彼女はメイクにあまり詳しくなかったが、メイク後の自分を見て満足した。これまでの生活は粗野だったので、こんなに念入りにおしゃれをしたことはなかった。
純希は選んだドレスに着替え、スカートの裾を持ち上げながら螺旋階段をゆっくりと降りてきた。翔は彼女を一目見て少し呆然とした。この女性は普段は少し粗野に見えるが、こうして着飾るとかなり魅力的だった。
純希は翔の視線から自分のスタイルが悪くないことを察し、「山崎様、この格好で外出しても大丈夫ですか?」と尋ねた。
「まあ、なんとかね。」
「……」
トニーは二人がまた喧嘩を始めるのを恐れ、上手く言葉を選んで二人を玄関から送り出した。さもなければ状況がコントロールできなくなるところだった!
森業の運転手は別の車で二人を迎えに来て、二人は車に乗ってクイーンズホテルへ直行した。
会場は68階にあり、そこには大きな屋外テラスがあり、延城の夜景を一望できた。