第122章 佐々木琴子の醜態

山田雪はこれ以上偽装を続けることができず、木下智樹の家で農場活動の場所を見に行くという口実を作り、智樹に先に送ってもらうことにした。

田中純希は先輩を引き留める勇気がなかった。彼女は先輩の心の痛みを知っていた。

純希は彼らを見送り、車に乗り込むのを見届けると、智樹に先輩をよく面倒見てあげてと頼んだ。

智樹は車をゆっくりと走らせた。雪の気分が落ち込んでいるのを見て、「気分が優れないなら、先に家まで送るよ」と言った。

彼は雪と陽太の間の異様な雰囲気に気づいていたが、二人がどんな関係なのか心の中で推測しながらも、尋ねる勇気がなかった。

彼はその答えを聞きたくなかった。そうすれば彼女に会い続ける理由がまだあるから。

雪は「じゃあ、先に家に帰るわ。また今度連絡するね」と言った。

智樹の心は少し楽になった。また今度があるなら、それでいい。

純希は藤田宗也と高橋光男に簡単に挨拶をすると、彼らに自由にしてもらうことにした。先輩が帰るときの気分が悪かったので、彼女も楽しい気分になれなかった。

渡辺健太は彼女の不機嫌に気づき、手を取って外に連れ出した。「どうしたの?」さっきまで大丈夫だったのに。

純希は先輩のことを健太に話すことはできなかった。結局は先輩のプライベートな問題だし、健太の様子を見ると、陽太も彼にこのことを話していないようだった。だからこそ、彼女が話すべきではなかった。

彼女は適当な言い訳をして「ちょっと疲れただけ」と言った。

健太は彼女の腰に腕を回し、近くのベンチに連れて行って座らせた。「じゃあ、ここで風に当たって少し休もう」

純希は陽太のことを思い出し、男性は何人かの女性を経験してから、自分が誰を好きなのかを知るものなのだろうかと考えた。

彼女は健太の横顔を見上げながら、なぜか佐々木琴子のことを思い出した。

琴子の写真を見たことがあり、確かに美しかった。今でも健太の心の中でどれだけの位置を占めているのだろうか?

純希は聞くべきではないと分かっていたが、それでも口に出してしまった。「健太、あなたと琴子さんは当時...どこまで進んだの?」

彼女は彼の腕にしがみつきながら緊張して言った。「ただの質問よ。答えたくなければ答えなくていいわ」