第130章 私はあなたを信頼している

田中純希は真剣な表情で言った。「今回は怒らないわ。あなたを信頼しているから。健太、もし今後あなたが私を裏切るようなことをしたと知ったら、私は去るわ。二度と見つからないところへ」

渡辺健太の心は引き裂かれるような思いだった。彼は彼女をきつく抱きしめた。「そんなことはない、純希。そんな日は来ない」

純希は健太の不安を感じ取ることができた。彼は本当に彼女を失いたくないのだ。少なくとも今はそうだった。

彼女は顔を彼の胸に押し当て、彼の落ち着いた力強い心拍を聞いた。それが彼女に大きな安心感を与えた。

彼女は腕を伸ばして彼の腰に回した。

先ほどの出来事は偶然だったが、佐藤妙にその気がないとは言い切れない。義母の言うとおり、妙とは距離を置くべきだろう。

健太にはこの後もう一つ会議があった。真川秘書が内線で彼に知らせた。「社長、南アジア地区の責任者たちが会議室に到着しました」

健太は会議をキャンセルして純希と早く帰宅したいと思ったが、純希は言った。「そんなことダメよ。あなたの仕事の邪魔をしたくないわ。会議に行って。ここで待ってるから」

健太は彼女にキスをした。「できるだけ早く終わらせるよ。疲れたら休憩室で少し休んでいいからね」

「わかったわ」

健太はもう一度彼女にキスをしてから、書類を持って出て行った。

オフィスには休憩室に直接通じるドアがあった。このドアは視覚的な死角に設計されており、あまり目立たなかった。

純希は休憩室に入った。ここは華敦ホテルの彼の大統領スイートのようで、すべての設備が整っており、彼の生活の痕跡が残っていた。

加藤さんから聞いた話では、以前の健太はほとんどの時間を会社やホテルで過ごし、家にはめったに帰らなかったという。それと比べると、結婚後は毎日時間通りに帰宅する渡辺社長は本当に良い夫になったものだ。

純希はそのことを考えると甘い笑顔になった。彼女がオフィスを出ると、健太のデスクの上の携帯電話からメッセージの着信音が聞こえた。

彼は2台の携帯電話を持っていて、1台は仕事用、もう1台はプライベート用だった。純希は携帯電話を手に取ると、木村拓也からのメッセージだった。

彼の携帯電話を見るのはあまり良くないかもしれないが、純希は見てしまった。

「社長、カメラが届きました」

カメラ?彼女へのプレゼントなのだろうか?