112 中島陽太、この野郎！

山田雪の顔は非常に辛そうだった。彼女はしばらくして言った。「彼が夏浜海岸の別荘に泊まった夜、パーティーに招待してくれたの。彼はたくさんお酒を飲んで、他の人たちが帰った後、私たちは自然と…」彼女はそれ以上言葉を続けなかった。

田中純希は何と言えばいいのか分からなかった。

雪はさらに言った。「翌朝、私はとても早く出て行ったの。二人が関係を持った後、少なくとも彼から積極的に話をしてくれると思ってた。もし彼が私のことを好きなら、私たちは付き合えばいい。好きじゃないなら、私も執着したりしない。でも彼は私を探してこなかった。私が妊娠を疑って、あなたと一緒に信杏に行くまで、彼はただメッセージで『どこに行ったの？』と聞いただけ。それだけよ。」

純希は信じられないという様子で言葉を継いだ。「じゃあ、あなたが戻ってきて彼を探したのに、彼はあなたに会おうともしなかったの？」

雪は目に涙を浮かべながら頷いた。彼女の声は泣き声を帯びていた。「純希、彼はもうあんなにはっきりと態度を示しているのよ。私がさらに自分を辱めて何かを確かめる必要があるの？」

純希は心を痛めながら彼女を抱きしめた。「先輩、中島陽太があなたを裏切ったのよ。もし彼があなたを好きじゃないなら、彼はそんなことするべきじゃなかった…」

雪は言った。「私から積極的だったの。彼を責められない。」

純希は信じなかった。彼女が知っている先輩はこういうことで積極的になるタイプではない。

「信じられないでしょ？私も信じられないわ。20年以上いい子でいて、まさか自分から彼に身を任せるなんて…本当に安っぽい。自業自得よ。」

純希はこれで信じた。そして先輩が彼を愛していたからこそ、そんなに大胆になれたのだと理解した。

雪は純希の首筋に顔を埋めた。彼女の涙はすぐに純希の服を濡らした。彼女は言った。「純希、私に少しだけ尊厳を残して。彼に問い詰めたりしないで。本当に恥ずかしいから。私はこの人生で一度バカになれば十分よ。」

彼女は恋愛経験がなく、まさか初めての恋で傷だらけになるとは思わなかった。

純希は今、陽太を殴りたいという気持ちでいっぱいだった。先輩はあんなに素晴らしい女の子で、どんな困難に直面しても涙を流したことがなかったのに、彼のせいで何度も彼女の前で泣いている。

どんなに強い女性でも、恋愛の前では脆いものだ。