山田雪は木下智樹の向かいに座り、智樹が話そうとするたびに、彼女は話題をすり替えて遮った。彼が告白するのを恐れていたからだ。もし告白されたら、どう応えればいいのか分からなかった。
店員が次々と料理を運んできた。智樹は気遣いよく彼女にスープを注ぎ、ようやく話すチャンスを見つけた。「君がキノコ系のスープが好きだったと覚えていたから、特にこの雲南料理のお店を選んだんだ。まだ好きかな?」
雪は言った。「とても良いわ。私は食事に好き嫌いはないから」
智樹は彼女を見つめた。彼の目は笑みに満ちていた。彼女が自分と食事に来てくれただけで、すでに嬉しかった。
彼はスープを彼女の前に置いた。「まずはスープを飲んで。熱いから気をつけて」
雪が手を伸ばして受け取ろうとしたとき、彼の手に触れてしまい、不自然に手を引っ込めた。「ありがとう」
智樹の心臓は少し速く鼓動した。南アジア株主会議で社長の代理を務めた時でさえ、こんなに緊張したことはなかった。彼は言った。「そんなに遠慮しなくていいよ」
雪は口元を引き上げて微笑み、スプーンを取ってスープを飲み始めた。
智樹は数口料理を食べた。彼は緊張のあまり手のひらに汗をかいていた。ついに彼は尋ねた。「雪、僕のことをどう思う?」
雪はスープにむせそうになり、ナプキンを取って口を覆った。
智樹はお茶を彼女に差し出し、少し慌てた声で言った。「驚かせてしまったかな?」
彼はもともと彼女とゆっくり接触して、徐々に自分を受け入れてもらうつもりだった。しかし最近、家族からの催促が激しく、もう先延ばしにはできなかった。
今回彼女を誘い出したのも、勇気を振り絞って口にしたことだった。断られて、友達としての関係さえ失い、彼女に会う理由がなくなることを恐れていた。
彼は緊張しながらも期待して雪の返事を待ち、彼女を見つめて瞬きすらできなかった。
雪の心も動揺していた。彼女は顔をそらし、入口に目をやると、その場で凍りついた。
智樹も彼女の視線の先を見て、表情が少し硬くなった。
中島陽太と藤田宗也がちょうど入口から入ってきた。彼らもこちらに気づき、陽太は足を止めてこちらに向かってきた。
雪は急いでナプキンを置き、姿勢を正して服を整え、内心の動揺を隠そうと努めた。