渡辺厚志は書類を取り出して言った。「これにサインしてくれれば、ゆっくり話し合おう」
七の大叔父様は彼の行動を見下ろして言った。「私の有効な遺言はすでに弁護士会に提出してある。一通だけが正式なもので、他は無効だ。お前のその書類に私が指印を押したとしても、法的効力はない。私の名義の財産は、お前には一銭も残さん!」
厚志の顔が歪んだ。彼は書類を引き裂いて脇に投げ捨て、手を伸ばして七の大叔父様の首を掴んだ。「この老いぼれ、わざと私に逆らっているのか?」
七の大叔父様がベッドの呼び出しボタンを押そうとしたが、厚志はもちろんそんな機会を与えなかった。彼は過去の様々な恨みを思い出し、手の力がどんどん強くなっていった。
「この老いぼれめ、あの時お前が邪魔さえしなければ、小林筠彦と結婚していたのは俺だったんだ。お前は俺にそれだけの借りがある。死ぬ間際になってまだ俺を出し抜こうとするのか。今すぐお前を送り出してやる!」
七の大叔父様の意識が徐々に朦朧としてきた。彼は渡辺家の後継者たちのことを思い、特に健太と純希のことが最も心配だった。渡辺修二はまだアメリカから帰ってきていない。本当はあと数ヶ月は持ちこたえて、彼らが皆元気でいるのを見届けてから、何の未練もなく旅立ちたかった。
残念ながら、それは叶わなかった。
高橋光男は車を入り口に停め、二人はエレベーターで上階へ向かった。
昼は看護師の交代時間で、廊下にはほとんど人がいなかった。
非常階段に潜んでいた男が、ドアの隙間から誰かが上がってくるのを見て、ゆっくりと銃を構えた。
隣の男が彼を制止した。二爺から渡辺九遠を傷つけるなと言われていた。
彼らはリストバンドの装置を押して二爺に知らせた。これは彼らの内部通信システムだった。
光男は数歩歩いただけで様子がおかしいことに気づいた。入り口の警備員がいないのはなぜだろう。
彼は本能的に九遠を後ろに守り、足音を軽くして病室のドアまで歩いた。
彼がドアノブを回そうとした瞬間、ドアが突然開き、マスクをした男が短刀を振りかざして襲いかかってきた。
光男は九遠を押しのけ、手を伸ばして防御した。腕に激痛が走ったが、彼はためらうことなく、もう一方の手で男の腕をつかんで強く引き下ろし、同時に足を上げて相手の腹部に突き、肘を力強く男の背中に落とした。相手は地面に倒れ込んだ。