第348章 スキャンダルの男主人公

木下智樹は拳を握りしめた。「上田玲奈、女に手を上げるように俺を追い込むな!」

山田雪は彼らが何を話しているのか聞こえなかったが、聞かなくても大体想像がついた。

玲奈の出現で逆に彼女はほっとした。さっきはもう少しでキスするところだった。

彼女はまだ心を開くことができず、玲奈の邪魔が少し有難く感じるほどだった。

彼女は車から降りて智樹に言った。「先に入るね、智樹、帰りは気をつけて運転してね。」

智樹は彼女をマンションの入り口まで送ろうとした。「雪、ちょっと待って。」

玲奈は彼の腕をつかんで離さず、智樹は雪がそのままマンションに入っていくのを見て、二人が引っ張り合っていることも気にしなかった。

なぜ彼女はあんなに冷静でいられるのだろう?彼が他の女性と親密になることを少しも心配していないのか?

玲奈は智樹が雪の後ろ姿をずっと見つめているのを見て、彼の幻想を打ち砕いた。「婚約者が他の女と絡んでいるのを我慢できる女なんていないわ。山田雪ができるのはなぜ?それは彼女があなたを愛していないからよ!」

玲奈の言葉に智樹は怒りを爆発させた。彼は彼女の手を振り払った。「たとえ彼女が俺を愛していなくても、俺は彼女と結婚する。お前には何の関係もない。」

「どうしてそんなに自分を貶めるの?あなたを愛していない人を選んで。私があなたを好きだってわかっているのに、どうして私を受け入れられないの?」

智樹は冷笑した。「お前が愛を知ってるのか?お前と遊んでる暇はない。邪魔するな。」

彼は振り返って車に乗り込んだ。玲奈は急いで後を追って車に乗り込んだ。「もちろん愛が何かわかるわ。昔は私、『命知らず』って呼ばれてたのに、今じゃ仕事の依頼も断って、毎日渡辺氏であなたに偶然会えるように、あらゆる手を尽くして真川秘書からあなたの好みを聞き出して、一日あなたに会えないと食事もできないの。これでも足りない?」

智樹は手を車の窓枠に置き、冷たく言った。「降りろ。」

玲奈は泣き出した。「あなたのためなら、スターの道だって捨てる。メディアにあなたとの関係を認めて、会社中が私のしたことの責任を取らされて、お父さんが帰国したら絶対に私を殺すわ。それなのにあなたはこんな扱い...うぅ...もう生きていたくない!」