田中純希は藤田宗也が浮気しているなんて死んでも信じられなかった。きっとどこかに誤解があるのだろう。
「妙、どうして宗也が浮気しているなんて言うの?何か異常な様子があった?」
佐藤妙は言った:「彼がアメリカに出張に行くんだって」
「それがどうしたの?彼はよくアメリカに出張に行くじゃない、一度や二度じゃないわ」
「違うの、彼は一人で行くって言ったのに、秘書に聞いたら河野采夏も一緒に行くんですって」
「河野采夏って誰?」
「宗也の会社の社員よ、何かテクニカルサポートコンサルタントとかって言ってたけど、私もよく分からないわ」
純希はさらに分からなくなった。「女性の部下が同行するからって浮気を心配するのは、ちょっと飛躍しすぎじゃない?」
妙は彼女に説明した:「采夏は宗也の以前のお見合い相手なの。しかも義母が紹介してくれた人よ。私は彼女が万粛テックに入ったのは宗也目当てだと思うわ」
この点については純希も何とも言えなかった。女性のこういう直感は当たることが多いものだ。
「私には宗也と采夏が一緒にアメリカに行くのに、なぜ私に隠すのか理解できないわ。年休を取って彼に同行したいと言ったのに、彼は許してくれなかったの」
これではますます疑わしくなる。
純希は言った:「こっそり後をつけて、彼らが何をしようとしているのか見てみたら?」
妙はそうすることも考えたが、勇気がなかった。宗也に知られたら怒られるのではないかと心配だった。「彼らを尾行するのはあまり良くないわよね?宗也は私が彼を信用していないと言うでしょう」
「あなたバカね」純希は本当に彼女にはあきれた。「昔はもっと賢かったじゃない!もし宗也に見つかっても、アメリカの友達に会いに行ったって言えばいいじゃない。アメリカはあんなに広いのに、彼がアメリカに行けて、あなたが行けないわけ?」
それもそうだ。どうせ彼女にはまだ十数日の年休が残っている。
「じゃあ行くわ」
「行ってらっしゃい。一人で気をつけてね。何かあったらすぐに連絡して」
純希は妙のことを心配していなかった。妙はアメリカの支社に何年も勤めていたので、アメリカ通だった。
妙は純希と電話で話し終えると、心が落ち着いた。すぐに航空券を予約した。