佐藤妙はどうすべきか決めかねていた。陽太を見に行くべきかどうか分からなかった。
陽太はアメリカに来てからずいぶん経ち、まるで人間蒸発したかのように、国内ではほとんど彼の消息を聞かなくなっていた。
妙は中島陽太が失恋のショックを受け入れられず、雪と木下智樹が一緒にいるのを見たくなくて帰国しないのだと思っていた。しかし、アメリカに来てみると、騰夏実業の支社にも陽太の姿はなかった。
陽太はどうしたのだろう?
妙は騰夏実業の支社ビルの向かいに長時間立っていた。宗也に見つかるのが怖くて、帽子とサングラスをかけていたが、半日経っても彼女の知っている人は誰も見かけなかった。
中に入って確かめようと思ったとき、思いがけない人物を見かけた。
山崎翔が車から降りて、ビルの入口に立っていた。しばらくすると、一人のアメリカ人中年男性が出てきて彼と言葉を交わした。
妙は電話ボックスの中に隠れた。翔がなぜここにいるのだろう?
妙は山崎翔が最近騰夏実業に対して友好的でないことを知っていた。彼はいつアメリカに来たのだろう?そしてなぜこのビルの近くに現れたのだろう?
妙はこれが偶然なのか、そのアメリカ人男性が騰夏実業の社員なのかどうかも分からなかった。彼女は携帯を取り出して写真を撮った。証拠があれば、陽太に調べてもらえるだろう。
山崎翔は話を終えるとすぐに車で去っていった。
妙は携帯をしまいながら考えた。山崎翔が何か悪だくみをしているなら、人を人目につかない場所に呼び出して詳しく話すはずだ。なぜ騰夏実業の前で堂々と人と接触するのだろう。
彼女は自分が考えすぎているのを願った。
ホテルに戻った彼女は、翌日に屋敷を訪ねる計画を立てた。その夜、宗也から電話があった。「会社の用事が多くて、帰国が数日遅れる。君は家にいて、どこにも行かないでくれ、いいね?」
藤田宗也は何度も彼女に大人しく家にいるよう念を押した。妙は今自分がアメリカにいることを言えなかった。
千裕が知ったら絶対に怒るだろう。
彼女は「わかったわ、あなたが帰ってくるのを待つわ。帰る前に電話してね」と答えた。
幸い、彼女は両親に数日間アパートに住むと伝えていた。両親は一人暮らしの安全に気をつけるよう言っただけで、何も疑っていなかった。