龍飛にからかわれた王蔷の顔はたちまち真っ赤になり、何も言えなくなってしまった。心臓はまるで小鹿のように激しく跳ね、頬は熱を帯び、首筋まで痺れるような感覚に襲われた。全身が何とも言えない不思議な感覚に包まれていた。
「姉ちゃん、大丈夫?」王巍は王蔷の頬が赤くなり、荒い息をしながら言葉も出ない様子を見て、心配そうに声をかけた。
龍飛は馬車の前方に立ち、片手に杖を突き、もう一方の手で馬車を支えながら笑顔を浮かべた。「皆さん、お金が目当てなんでしょ?だったら人を傷つけないでよ!見てよ、俺もうボロボロだよ。このままだと死んじゃう!」
「ハハハハ……!」漢語を話す盗賊が、手にした湾刀を振りながら大笑いした。「分かってるじゃねぇか!さっさと金を全部出せ。昆侖神の名にかけて誓う、他のことには手を出さねぇ!」
龍飛は苦しそうに馬車から降りた。その様子があまりに滑稽で、盗賊たちはまたどっと笑い出した。地面に降り立ち、ぴょんぴょんと小さく跳ねて立ち直り、頭をかきながら少し困ったように言った。「金を渡すのは別にいいけど、うちの親父がこう言ってた。他人の物を奪うなら、何か理由がいるって。これだけ人数揃って、足の悪い俺一人を脅すのは、昆侖神の面目に関わるんじゃないか?俺は博打好きだし、ここは一勝負どう?この足の悪い俺と勝負してみる気、ある?」
龍飛が話すたびに、通訳の盗賊が頭領に翻訳して伝えていく。話が終わると、頭領は馬上で何かを指示した。通訳は笑いながら言った。「うちの頭領が言ってたよ。お前のことが気に入ったって。で、勝負ってのは何をするんだ?」
龍飛はにこりと笑った。「こっちは人数が少なくて、どうやったって力じゃ敵わない。だからこそ勝負だよ!お前らの得意なことでいい。ただし、俺を倒せたら、馬車に積んでる金は全部あげる!」
王巍はそれを聞いて飛び出しそうになった。龍飛は片足を失っている。そんな彼を倒すのは誰にでもできる。自分には勝てる自信はないが、それでも龍飛を兄貴のように思っている。命懸けでも守る覚悟だった。しかし王蔷が腕を掴んで引き止め、首を横に振って「様子を見て」と目で合図を送った。
華佗は微笑んだ。「この若者、底が知れない。こんなことを言い出すには、それなりの自信があるってこと。心配するな、少し様子を見ようじゃないか。」
通訳の翻訳が終わらないうちに、盗賊たちからは大爆笑が起きた。猿のような顔をした小柄な男が馬から飛び降り、黒大男に何かをまくし立てる。周囲からまた笑い声が上がる。黒大男は微かに頷いた。
その小柄な男は馬を降り、龍飛を数回じっと見た後、通訳が叫んだ。「こいつがうちの最強の使い手だ。お前に花を持たせてやるってことさ。頭領がおっしゃってる、こいつに勝てたら見逃してやるってな!」
龍飛は杖をつきながら、ふらつきつつその男に頷いた。北方で軍務に就いていた彼は、蒙古族とも多く接してきた。この連中の言葉は蒙古語と少し違うが、断片的には理解できる。彼らの目つき、笑い声、言葉の端々から、ある程度の状況を察していた。
「なるほど、なるほど!それじゃ、お手並み拝見といこうか。どうかお手柔らかにお願いしますよ?」
「ハハハハハ!」男は大笑いしながら湾刀を引き抜き、帽子を放り投げ、背を丸めて龍飛に近づいてきた。龍飛は怯えた様子で、ひょこひょこと後退りする。その姿に男は冷笑を浮かべ、刀を突き出して飛びかかった。
刀が龍飛の胸元を捉えようとした瞬間、彼はぴょんと跳ねて足をもつれさせ、仰向けに転倒。男の湾刀は彼の鼻先をかすめて通り過ぎた。群衆からまたどっと笑いが起きた。誰かが冗談を言いながら笑っている。その小柄な男の顔に殺気が浮かんだ。
一撃を外した男はすぐに体勢を立て直し、倒れた龍飛に連続で刀を振り下ろす。しかし龍飛は地面を転がるようにかわし続ける。人々の笑いは止まず、男はどんどん怒りを募らせていった。「この俺が、たかが片足の小男に手こずるとは……!」激昂し、大声で叫ぶと男は飛びかかり、湾刀を高く振り上げ、龍飛の腰を狙って一閃を加えた。