第60章 結婚指輪(1)

西園寺真司はまた須藤夏子を連れて色々と見て回り、ついでに夏子が何度も見ていた品物を全て買い込んだ。

帰る頃には、真司の両手には買い物袋がいっぱいになっていた。夏子は無意識に手を伸ばして、彼の負担を少しでも軽くしようとしたが、真司が彼女の差し出した手をじっと見つめているのに気づいた。なぜか...彼女は手を引っ込めたくなった...

「ま、また何かあったの?」

真司は視線を戻すと、言った。「何でもないよ。君はショッピングモールのVIP休憩室で待っていてくれないか?急に少し用事を思い出したんだ。長くはかからないから」

そう言うと、彼は夏子を休憩室まで送り、自ら支配人に彼女をよく世話するよう指示した。

夏子も歩き疲れていたので、休憩室で真司を約20分ほど待ったが、彼が戻ってこないので電話をかけようとした。そこで自分がまだ新しい携帯電話を買っていないことに気づき、支配人に言った。「荷物はここに置いておくので、すぐに戻ってきます」

ショッピングエリアに戻った夏子は、まず自分の携帯電話を買おうとしたが、宝石店の前を通りかかった時、彼女の足が突然止まった。

真司は彼女にとても良くしてくれて、何でも用意してくれた。彼女も何か買って自分の感謝の気持ちと決意を表すべきではないだろうか?

彼女と真司はすでに結婚しているのに、まだ結婚指輪を用意していなかった。真司は男性だから、こういった細かいことを見落としていたのかもしれない。

そう考えると、夏子は宝石店に足を踏み入れた。

「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」店員の声は丁寧だったが、その視線は素早く夏子を上から下まで見渡した。

今日の午前中、夏子は本来真司が用意してくれた服を着ていたが、一日中真司と走り回って全身汗だくになったため、ホテルに戻ってシャワーを浴びた後、デニムのショートパンツと普通のTシャツに着替えた。午後に真司に急いで連れ出されたので、服を着替える時間もなかった。

店員の密かな視線に気づかず、夏子は広い宝石店を見回してから言った。「結婚指輪を見たいのですが」

店員は夏子を比較的人気のない隅へ案内して言った。「お嬢様、こちらは比較的流行りのデザインです。一つお買い求めですか、それともペアでしょうか?」