須藤夏子が言ったその二文字は、西園寺真司の心を今までにないほど満たした。
彼は夏子がなぜ最初から最後まで彼をそこまで信じ、自分の心の内を隠すことなく見せるのか分からなかったが、その感覚に彼は溺れていた。
胸が熱くなり、真司はもう自制できなくなって、両手を夏子の襟元に伸ばした。
夏子はさっきまで喜びに浸っていたが、彼の手のひらの熱を感じた途端、体が硬直し、真司を強く睨みつけた。
真司は不良のように笑いながら、手の動きを速めつつ誓った。「触るだけだよ、絶対に他のことはしない」
夏子の顔は再び真っ赤になったが、彼のすることを許した。
一夜の情事……
翌朝、雨は上がり晴れていたが、夏子は真司を甘やかしたせいで、また寝坊してしまった。
「大変!もう9時半だ、間に合わない!」
夏子は目覚めるとすぐに時間を確認し、昨夜の恥ずかしさも忘れて、ベッドから飛び起きて洗面所に駆け込んだ。
真司も珍しく朝寝坊をしていたが、小さな妻が慌てふためいて洗面所に走り込む姿を見て、思わず口元に笑みが広がった。そして櫻井静に電話をかけた。
「試唱を11時に延期しろ。後で俺が直接夏子を連れて長谷に会わせる」
命令を終えるか終えないかのうちに、夏子は洗面所から飛び出してきて、続いて衣装部屋に駆け込んだ。
真司はバスローブを羽織って後を追い、夏子が悩みながら服を選んでいるのを見て、鋭い目で一瞥すると、長い指で一組の服を選び出した。
夏子はそのシンプルなカジュアルトップとジーンズを見て、困ったように唇を噛み、「こんな普通の格好で、大丈夫かな…」と言った。
真司の視線は彼女の首筋の後ろに落ち、そこには彼の情熱の痕が残っていた。彼は何気なく笑って言った。「環宇会社にはよく有名人が出入りしているし、お前が持っているテーマ曲は多くの歌手が争っているんだ」
夏子はほんの少しのヒントで真司の意図を理解した:彼女は目立たないようにするべきだ!
真司はこの小さな妻が十分賢いことに感謝した。夏子が服を着替え終わる頃には、彼も身支度を整えていた。
夏子は彼も出かける様子を見て、彼を引っ張って尋ねた。「先に環宇まで送ってくれる?」