第188章 笑顔が菊の花のように~【追加更新】

この時、校長室にいた須藤夏子は、鈴木森吾が東京に来ていることも、自分のマネージャーが既に「裏切った」ことも知らなかった。

「須藤先生、環宇会社と契約を結んで、環宇レコードのアーティストになったそうですね。おめでとうございます」校長は夏子を見るなりにこやかに笑顔を浮かべた。

夏子は謙虚に答えた。「確かに環宇と契約しましたが、私の本職はあくまで教師です。校長先生、ご安心ください。今後も他のことで仕事に支障をきたすことはありません」

校長は慌てて言った。「須藤先生、とんでもない。実はお伝えしたかったのは、学校があなたと新たに契約を結びたいということなんです」

「新たな契約?どうしてですか?」

「須藤先生は環宇のアーティストになられましたから、規定により、身分も客員教授に変更する必要があります。そのため新たな契約が必要で、授業時間もあなたのスケジュールに合わせて調整し、給与も元の3倍になります」

「3...3倍!」夏子は頭が真っ白になり、お金に目がくらんで最後の一言だけをはっきり聞き取った。

校長は3本の指を立てて、にこにこしながら言った。「そうです、3倍です。もし須藤先生が今後大成功されれば、この金額もさらに何倍かになるでしょう」

夏子は目を動かしながら、小声で尋ねた。「給料を前払いしてもらえますか?」

校長はちょっと詰まった後、尋ねた。「須藤先生はお金が足りないのですか?」

夏子は歯を食いしばって頷いた。彼女はお金に困っているわけではなかったが、自分で稼いだお金が必要だった。もっとお金があれば、西園寺真司により良いプレゼントを買うことができる。彼女は既に家で計算していたが、手元にある数十万円では真司にジャケット一枚買うのがやっとだった。

校長は少し考えてから、頷いて言った。「新しい手続きが完了したら、経理課で前払いを受けてください。どれくらいの期間分の給料が必要ですか?」

「1...年分、大丈夫でしょうか?」

校長の体が少し震えたが、歯を食いしばって言った。「大丈夫です。ただし、他の教職員には知らせないでください」

女将が給料の前払いを求めるなら、無理でも可能にしなければならない!

夏子は了解し、校長に安心させるような視線を送り、すぐに新しい契約を結びに行った。仕事が終わる頃には、前払いの給料が既に口座に振り込まれていた。