西園寺真司が風呂から出てきたとき、須藤夏子はそっと妊娠検査薬を彼の前に差し出した……
「これは——」
真司は眉を上げて、その非対称なプラスチック製品を見つめ、3秒後にようやく反応し、素早くその妊娠検査薬を手に取り、中央の二本の赤い線に目を凝らした!
二本の赤線、一本は濃い赤、もう一本は薄い赤色。
彼は経験はなくとも、常識は持ち合わせていた。これは……夏子が妊娠している可能性が非常に高いということだ!
胸の内に湧き上がる感情を抑えながら、真司は検査薬を置くと夏子を抱き上げ、そっとベッドに寝かせた。
夏子は唇を噛みしめて笑い、恥ずかしそうに、そして緊張した様子で彼の腕をつかんで尋ねた。「真司、私、妊娠したのかな?」
その瞳に映るのは、明らかに肯定の答えを求める思いだった。
真司の端正な顔に微笑みが浮かんだが、表情は冷静さを保ち、彼女の手を両手で優しく包み込みながら理性的に言った。「妊娠検査薬の精度は100%ではないから、明日血液検査に連れて行くよ」
夏子はようやく気づいた。真司の顔には初めて父親になる喜びの表情がないことに。彼女は心臓が震え、再び不安げに尋ねた。「あ、あなた、まだ子供が欲しくないの?」
真司はただ結果が確定するまで自分に余裕を持たせたかっただけだったが、夏子に誤解されてしまったことに気づき、急いで彼女の頬をつまみ、笑いながら言った。「変なこと考えないで。僕は誰よりもあなたの子供が欲しいんだよ」
夏子は彼の目を見つめ、その瞳に映る深い愛情と誠実さを確認して、ようやくほっと息をついた。
夏子を安心させて眠らせた後、真司はその妊娠検査薬をしっかりと握りしめ、医師に電話をかけた。
「原田先生、東京で知り合いの権威ある婦人科医はいますか?」
「婦人科ですか?和豪婦人科病院の院長は私の旧友ですよ」
「明朝の妊娠検査の予約をお願いできますか」
「妊娠検査?若奥様がご懐妊されたのですか?では明日、採血のために人を派遣しましょう」
「いいえ、私が直接連れて行きます」そうすれば時間を節約でき、より早く結果がわかる。
原田医師は承諾の返事をし、電話を切るとすぐに手配に取り掛かった。
真司は既に眠りについている夏子を見つめ、ついに抑えきれずに馬鹿みたいに笑い出した……