須藤夏子は西園寺真司の過去の評判があまり良くないことをずっと前から知っていたが、再び陸橋軽穂の口からそのような言葉を聞くと、やはり胸が詰まる思いがした。
唇を噛みながら怒って階段を上がると、夏子は階段の曲がり角で運動着を着た鈴木森吾に出くわした。彼女は既に森吾が家に二日間滞在することを知っていたので、彼に会っても少しも驚かなかったが、無意識のうちに避けようとした。
しかし森吾は彼女の行く手を遮った。
「俺と西園寺真司がバスケをしに行くんだが、君も参加する気はないか?」
夏子の怒りに満ちた小さな顔に一瞬の戸惑いが浮かんだ。
真司がバスケをする?
かつて学校でみたかっこいいバスケをする男子たちを思い出し、夏子は自動的に汗だくになって活躍する真司の姿を想像した。そして突然、彼女は唾を飲み込んで尋ねた。「真司はどこにいるの?」
彼女は美しさに誘惑されたことを決して認めないだろう!
「彼はもう先に行ってるよ」
そう言うと、森吾は階段を降り続け、夏子はその後に続いた。
「聞いたところによると、君と真司は結婚してあまり経っていないんだって?」森吾は歩きながら尋ねた。ただ何気なく話したいだけのようだった。
夏子は鈴木とあまり話したくなかったが、このように相手の質問に全く答えないのは非常に失礼だと思い、淡々と「うん」と答えた。「結婚して二ヶ月です」
「スピード婚だったんだろう?」
夏子は再び「うん」と答えた。
「じゃあ、彼の過去について知ってるのか?」森吾はさらに尋ねた。
夏子は、彼とそこまで親しくなってこのような質問をされる間柄ではないと感じ、少し適当に答えた。「少しは知ってます」
森吾は彼女のいらだちを感じ取ったが、気にする様子もなく、歩調を緩めながら質問を続けた。「じゃあ、彼と深井詩乃の過去についても知っているだろう。陸橋から聞いたんだが、昨日、詩乃が...まあいいや、言うのはやめておこう。詩乃という人間には接点があるが、彼女は真司に対してかなり執着していて、行動も狂気じみている。君も気をつけた方がいいよ」
夏子は森吾がなぜ突然こんなことを話し始めたのか分からなかったが、彼の言葉から察するに、彼は昨日何が起きたのか知っているようだった。
彼女は突然足を止め、尋ねた。「鈴木社長、陸橋さんは何を話したんですか?」