宿泊場所は確かに遠くなかった。
須藤夏子は西園寺真司に背負われ、一番に目的地に到着した。そして全身がしっかりと守られていたため、足に泥もなく、体のどこも雨に濡れていなかった。
陸橋軽穂と宮平一郎はずぶ濡れになってしまった……
「入ってお湯に浸かりなさい。風邪をひくよ」真司は彼女の髪をかき分け、髪の先に雨水がたくさん付いていることに気づき、急いで中に入るよう促した。
軽穂は自分の顔の雨水を拭い、切実にお風呂に入りたくて、バッグを抱えて中に飛び込みながら言った。「一番大きい部屋は僕のだ!」
真司は手を伸ばして彼の襟をつかんだ。軽穂はすぐに空中で一回転し、哀れっぽく叫んだ。「兄貴、何するんだよ!」
「部屋は二つしか予約してない。お前と一郎で一部屋だ」
言い終わると、真司は自分のキャンプバッグを取り、軽穂一人を風の中に放置した……
雨のため、景地山荘の部屋は非常に混んでいた。真司は事前に予約していたので、良い部屋を確保できたが、石川城太たちが到着した時には、もう一部屋しか残っていなかった。
「深井家が事前に手配したんじゃないのか?なぜ部屋が足りないんだ?」城太はフロントに立ち、不機嫌な顔で深井杏奈に詰問した。
杏奈は風に吹かれ雨に濡れ、まるで氷の穴に落ちたかのように、顔は紙のように青白かった。城太の詰問に対して、彼女の心はやはり酸っぱさを感じずにはいられなかった。「深井家が手配したホテルは山の麓の近くにあるんだけど、今は雨が強すぎて車が通れないの。みんな一晩だけ我慢してね」
「でも部屋は一つしかないのに、どうやって我慢するんだ?」城太の友人が尋ねた。男女が一緒に泊まるわけにはいかないだろう。
「西園寺真司がここで部屋を予約したんだろう?彼に一部屋譲ってもらおう」城太はこんなに多くの人と同じ部屋にいたくなかった。特に杏奈とは一緒にいたくなかった。
杏奈は今はこれしか方法がないと思い、うなずいて同意し、すぐに真司を探しに行った。
真司はちょうどお風呂に入ったところで、夏子はすでに入り終わっていた。ノックの音を聞いて、夏子は軽穂だと思ったが、ドアを開けると杏奈の異常に青白い顔が見え、杏奈は全身がふらふらとドアの前に立っていた……
「どうしたの?」夏子は杏奈のこの様子が演技ではないことを見て取った。