そう言い残すと、石川城太は病室を出て、人に病室を見張らせた。
二時間後、深井杏奈と須藤明良が相次いで手術室から運び出された。
「杏奈はどうだ?」深井和久は手術室の前でずっと待機していて、医者が杏奈を運び出すのを見るとすぐに前に出て尋ねた。
医者はほっとした様子で言った。「失血過多でしたが、搬送が早かったので命に別状はありません。ただ、しばらくの間はしっかり観察と休養が必要です。」
「子どもは?」
医者は残念そうに言った。「申し訳ありません、私たちは最善を尽くしましたが、お子さんは助けられませんでした。」
和久はそれを聞いて残念そうに深く息を吸ったが、後ろに立っていた城太は、密かにほっとしていた。
「城太、君はここで杏奈と須藤さんをしっかり看病してくれ。私はおばあさんたちに報告してくる。石川家の方には…城太、こんな悲劇が起きたのは杏奈の望んだことではない。石川家にはしっかり説明してくれ。これは杏奈の責任ではないんだから。」和久は杏奈の境遇を哀れに思い、杏奈が深井家に戻ってからというもの、この妹を特別に気にかけていた。今回のような事態が起きたため、当然ながら杏奈のことをより心配していた。
「わかっています、兄さん。先に行ってください。」城太は無理に笑顔を作り、和久の言葉に同意した。
和久はようやく安心して立ち去った。
和久が去るとすぐに、城太のアシスタントが急いでやって来て、書類の入った封筒を城太に渡した。
城太はすぐに開封せず、まず杏奈を特別病室に送り届けてから、その書類を持って明良の病室へ向かった。
この時、明良はすでに目を覚ましていた。彼は虚ろな目で天井を見つめ、まだ現実に戻れていないようだった。城太が入ってきた時も、目を動かすことさえしなかった。
「須藤さんは随分と冷静ですね。」正直なところ、城太は明良のことをある程度評価していた。
あれほど大きな詐欺計画には、明良が裏で知恵を絞っていたに違いない。最も重要なのは、明良が深井家の老夫人を騙す方法を持っていたことで、明良の思考がいかに緻密であるかを示していた。
明良は城太に返事をしなかったが、視線を天井から外し、淡々と城太を一瞥した。
城太のアシスタントがベッドの前に椅子を置き、城太はゆったりと座ってから、手にした書類の入った封筒を明良の目の前に差し出した。