第335章 腕力より金力!

夕方近くになって、深井杏奈と石川城太に関するニュースはようやく収まり、深井家と石川家の前にいた記者たちも全員撤収した。

ネットメディア上の噂は全て削除されたものの、一日中騒がれたため、東京の上流階級の人々はほぼ全員がこの醜聞を知ることとなった。ただ、皆が暗黙の了解で口にしないだけだった。

須藤夏子は一日中メイクを試したが、最終的なスタイルを決めることができなかった。監督が不満を持つか、西園寺真司が不満を持つかのどちらかで、もちろん、ほとんどの場合は西園寺若様が不満を持っていた。しかも監督はこの若様を怒らせる勇気がなかった……

「須藤お嬢さん、この7つのスタイルの中でお気に入りはありますか?」スタイリングルームも手を尽くして疲れ果てていた。主に撮影クルーが西園寺の拷問からこれ以上苦しみたくなかったため、解決策を須藤夏子に求めたのだ。

夏子は7つのセットの写真を見渡し、突然疑問に思って衣装デザイナーに尋ねた。「ただのゲスト出演の役なのに、なぜこんなに多くの衣装があるんですか?」

彼女が普段テレビドラマを見るとき、脇役は2、3着の衣装しか持っていないのに、なぜ彼女のようなゲスト出演者が7セットも持っているのだろうか?

衣装デザイナーとスタイリストは目を合わせ、二人とも西園寺の方をちらりと見たが、何も言わなかった。

夏子は彼女たちの視線を追って西園寺を見つめ、自分のスタイリング中に衣装デザイナーが絶えず服を修正していたことを思い出し、唇が少し震えた。不確かに尋ねた。「この服、私の役のために用意されたものではないですよね?」

衣装デザイナーは黙り続けた。

その通りだった。この中の5セットの衣装は女優主役のために準備されたものだった。女優主役は大物だったが、西園寺若様のお金の力には勝てなかった。彼の「投資する」という一言で監督は膝を折り、さらに鈴木社長自ら監督にこの須藤お嬢さんをよく世話するよう命じたため、監督は撮影クルーの中で最も美しい衣装を全てこの須藤お嬢さんの前に持ってきたのだった。

夏子は衣装デザイナーが黙っているのを見て、メイクルームの他のスタッフも全員が口をつぐんでいるのを見て、自分の推測が正しいことを確信した。

「この中で私の役のために用意された衣装はどれですか?」夏子は再び衣装デザイナーに尋ねた。