美智は今井修平のハマー車に座り、彼から渡されたタオルを受け取って、濡れた髪を拭いた。
修平は気遣い深く、運転手に車内の温度を上げるよう指示し、彼女に毛布をかけ、真新しい白いシャツを渡した。優しく丁寧で、お金持ちの若旦那という態度は微塵も見せなかった。
美智はなんとなく理解できた。なぜ彼がプレイボーイとして知られているにもかかわらず、いつも女の子たちが一途に彼を好きでいるのか。彼は確かに人の面倒見がよかった。
美智は彼の助けに感謝していたが、だからといって余計な感情が生まれることはなかった。
彼女は修平のシャツを着ることなく、依然として距離を保ったまま言った。「修平様、何かお仕事を私に任せていただけますか?」
修平は彼女に向かって苦笑いした。「本当に仕事がしたいの?」
「契約してから数日経ちますが、ずっとお仕事を割り当てていただいていないので、少し不安に思っていまして」
「現在の仕事はグループの人たちでもまだ対応できているし、君の手を借りる必要もない。君は私の切り札であり、エースカードでもある。ただ、グループはすぐに森田グループと海外プロジェクトの入札競争をすることになる。その時は君に私と一緒にフィンランドへ出張してもらう必要がある。期間は約2日だ」
「ご安心ください。グループがプロジェクトを獲得できるよう、私の能力を最大限に発揮します」
修平は軽く笑った。「君の能力は知っているから、今回の入札は必ず勝つつもりだ。森田グループでこのプロジェクトを担当していたのは元々武田瀧尾で、簡単に勝てると思っていたんだが、彼が突然いなくなってしまった。森田グループは武田直樹に担当を変えた。本来なら私に勝ち目はなかったが、君に出会えたおかげで、今は彼と勝負できる」
美智は少し驚いた。彼がそこまで直樹を高く評価しているとは。
彼女は直樹に5年間仕えてきたので、当然彼の能力を知っていた。外部の人間や武田家は瀧尾の能力が高いと思っていたが、美智は知っていた。瀧尾の能力は直樹に遠く及ばず、難しい問題は実際には直樹が瀧尾のために解決していたことを。
しかし、修平がどうしてそれを知っているのだろう?
修平は一目で彼女の疑問を見抜いた。「私と直樹は中学の時、同じクラスだった。彼はクラスの異端児だったが、先生たちの目には天才だった」