「義姉さん、昨日トレンド入りしたわね。あのドレスが大人気になったのよ!今、多くの人が同じものを探してるわ。友達が朝早くに教えてくれたんだけど、あなたが借りたドレスは本物だから、返したとたんに誰かに買われちゃったって」
美智は思わず布切れを一枚拾い上げた。
間違いない、これは昨日彼女が借りたドレスの破片だ。
おかしいじゃないか?
誰が彼女の代わりに同じ服を見つけて返したというの?
彼女にドレスを貸したスタイリストは、このドレスは国内に一着しかなく、絶対に被ることはないと言っていたはずだ。
彼女のドレスが粉々になったことを知っているのは、武田直樹だけ。
もしかして彼が同じものを見つけて返したの?
彼がそんな親切なことをするはずがない。
美智は急いで武田香織との電話を切り、唇を噛みながら直樹にメッセージを送って探りを入れた。
「武田直樹、頭おかしいの?」
「?」
「ドレスを返してくれたのに、どうして言わないの?」
「なぜ言う必要がある?」
「本当にあなただったの?!」
「他に誰がいる?今井修平でも?」
美智はしばらく、彼に感謝すべきか罵るべきか分からなかった。
また修平の話を持ち出して。修平は彼女のドレスが壊れたことなど知らないのに、どうして暇があれば彼女のために全く同じドレスを探して返すだろうか。
いや、なぜ彼に感謝する必要がある?ドレスを引き裂いたのは彼なのだから、当然彼が弁償すべきだ。
ただ、彼は彼女の代わりにドレスを返しておきながら、何も言わず、彼女をやきもきさせた。本当に人でなしだ。
「美智、早く諦めた方がいいよ。今井修平は君と結婚するつもりはない。ただ遊んでいるだけだ」
「自分でニュースを検索してみるといい。彼のスキャンダルはたくさんあるし、よく女を連れてバーに飲みに行くんだ。警告しておくが、彼と一緒に行くな」
「彼の家族は今、彼と山本家の娘との結婚を手配している。今井家族は必ず名家と縁組みするものだ。君には資格がない」
天雲市には四大トップ名門家系があり、第一位は武田家、次いで今井の家、中村家、山本家だ。
名門同士の結婚は普通のことだ。山本家は最後に位置しているが、実際には政界での影響力が非常に大きく、単純にお金だけで測れるものではない。