陸直樹はこの点ではまだ責任感があった。美智はもうそのことに関心を持たず、車の座席に寄りかかり、窓を下げて外の街並みを眺めた。
心の中ではまだ少し憂鬱だった。どうして彼女は直樹を助けてしまったのだろう?次回は絶対に気をつけなければ、もう彼の駒にはならないようにしないと。
朝の風は涼しさを帯び、彼女の長い髪を撫でていた。彼女は手を窓の外に伸ばし、そよ風と陽の光を感じていた。
生きているって素晴らしい。
九死に一生を得たのだから、きっと後福があるはずだよね?
直樹は彼女に腕を中に入れるよう注意しようとしたが、口を開こうとした瞬間、彼女の腕にも傷があることに気づいた。切り傷とロープの痕が青紫色に、乾いた血痕とともに残っており、かなり目を引くほど酷いものだった。
こんなに傷だらけなのに、まだ病院に行かないつもりなのか?
彼女の祖母の薬を頼りに、勝手なことをしている。
まあいいか、彼女の祖母の薬は確かに病院のものより効くし、好きにさせておこう!
黒いマイバッハが住宅地に入り、美智のマンションの入り口前で停車した。
美智は隣にもう一台車が停まっているのを見た。夫婦らしき人たちが次々と建物の中に荷物を運び込んでいた。
彼女は少し不思議に思った。この建物に新しい住人が来たのだろうか?
彼女は車から降り、思わず前に進み尋ねた。「新しい隣人ですか?何階に住むんですか?」
箱を運んでいた女性は彼女をちらりと見て、そっけなく言った。「二階よ」
「二階?」
美智は顔に疑問を浮かべた。彼女も二階に住んでいる。まさか向かいの黒川叔母さんが引っ越したのだろうか?それはおかしい、黒川叔母さんが引っ越すなら彼女に一言言うはずだ!
彼女は疑問を抱えながら階段を上がり、二階に着くと、自分の家のドアの鍵が交換されており、今は開け放たれていた。
その女性が箱を持って彼女の家に真っ直ぐ入り、ドンという音を立てて箱を床に置いた。そこにはすでに彼らが運び込んだ様々な物が山積みになっていた。
元々埃一つなく整然として温かみのあった家は、彼らによって汚く散らかされていた。
美智は全身の血液がほとんど凍りつくような思いだった。彼女は中に駆け込み、大声で言った。「出て行って!何をしているんですか?!ここは私の家です!」