美智は眉をひそめた。「お父さんがおばあちゃんをここに寄越したの?」
「そうよ。あなたの住所は本当に見つけにくかったわ。お父さんが教えてくれた住所を頼りに、道を尋ねながらやっと辿り着いたのよ」
老婦人はそう言いながら、美智を押しのけて、勝手に居間に入っていった。
彼女はソファに座っている沢田苗子を見ると、自分もどっかりとソファに腰を下ろした。「道中で疲れ果てたわ。奈々子、何をぼんやりしているの?早くおばあちゃんにお水を持ってきなさい」
美智は眉をひそめたが、結局水を注いで老婦人の前に差し出した。
老婦人は一気に飲み干すと、今度は苗子をじっくりと観察し始めた。「沢田ちゃん、あなたは私より若く見えるわね。私たち、たった二歳しか違わないのに、十数歳も差があるように見えるわ。あなたはもう六十代後半なのに、五十代にしか見えないわ!孫娘に孝行してもらっているからこそ違うのね!」
苗子は若い頃からこの老婦人と付き合いがあったが、彼女に対する印象はあまり良くなかった。当時から冷淡な態度を取っていたが、今も変わらず冷ややかだった。「奈々子は確かに孝行者よ。でも私があなたより若く見えるのは奈々子とは関係ないわ。私たち沢田家は代々医者の家系で、養生の道を心得ているのよ」
「まあまあ、そうよそうよ。私たち農家の者は、お医者さんのあなたたちとは比べものにならないわ!」
「私たちに養生なんて分かるはずがないわ。ただ真面目に重労働をするだけよ!」
「あなたたちはお金も稼げるし、食べ物も良いものを食べられる。それに孫たちに心配させられることもない。ねえ、沢田ちゃん、あなたはまだ孫がいないのよね?」
彼女の皮肉な口調に、苗子は顔を曇らせた。「窪田梅子、あなた何が言いたいの?私はあなたに何もしていないのに、わざわざ訪ねてきて喧嘩を売るつもり?」
「まあ、そんなつもりじゃないわよ!」
窪田梅子は謝るような表情を浮かべた。「あなたは教養のある人なのに、私のような農家の者と言い争って何になるの?あなたは病気だったんでしょう?怒らないで。さっきは自分が養生を知っていると言っていたのに、今は知らないの?」
美智はおばあちゃんの体調が少し良くなってきたところで、この老婦人にまた悪化させられるのではないかと心配だった。