そうだ!
以前アメリカにいた時、銃で撃たれた元軍人のおじさんに会ったことがあった。その時、彼は病院に行かず、自分で刃物を使って弾丸を取り出し、自分の命を救ったのだ。
永川安瑠は必死にその時の状況を思い出し、そのおじさんが何気なく教えてくれた止血に効く薬草のことを思い出した。彼女はすぐに自分のスカートから布を強引に引きちぎり、傷口を塞いで出血を止めた。そして立ち上がり、洞窟の外へ歩いて行った。
すぐに彼女は戻ってきた。手には何種類かの薬草を握りしめ、小さな顔には喜びの表情が浮かんでいた。
こんな場所でこれほど多くの止血効果のある薬草が見つかるとは思わなかった。これで勝算が高くなった。
洞窟に戻ると、武内衍がゆっくりと目を開けた。自分の前にしゃがみ込んでいる安瑠を見て、眉をしかめた。「怪我はないか?」
彼が目覚めて最初に自分の怪我を心配してくれたことに、安瑠はようやく押し戻していた涙がまた溢れそうになった。彼に向かって首を横に振り、「私は大丈夫よ。でもあなたは、肩を銃で撃たれたわ」と言った。
衍は彼女が無事だと聞いてようやく安堵の息をついた。端正な顔には汗が浮かび、表情は相変わらず冷静だった。彼は自分の右肩の傷口を見た。布切れが詰められており、とりあえず出血は止まっていた。
彼の瞳に驚きの色が過ぎり、「まさかこんな方法で止血できるとは」と尋ねた。
安瑠は照れくさそうに笑い、手に持っていた薬草を脇に置き、彼の傷口を確認した。「ナイフがあれば良かったのに。そうすれば弾丸を取り出せて、感染を防げるのに」
「君は弾丸を取り出せるのか?」衍は眉を上げて彼女を見た。顔色は青白かったが、その気品と優雅さは少しも損なわれていなかった。
すると衍は腰から軍用ナイフを取り出し、彼女に差し出した。「頼む」
安瑠は手の中のナイフを見つめ、次第に血で赤く染まっていく布を見た。そして衍を見て、「痛かったら私の手を噛んでもいいわ」と言った。
衍は彼女が怖がっているのだと思ったが、実は彼が痛むことを心配していたのだと気づき、心が温かくなった。軽く笑いながら頷いた。
安瑠は歯を食いしばり、覚悟を決めたように傷口に詰めていた布を取り除いた。すぐに新鮮な血が流れ出した。
ナイフを傷口に当て、安瑠は思い切って力強く切り込んだ。