第220章 私は彼のことなんか好きじゃない!

葉山逸風はあの酸っぱいものが好きではなかったが、永川安瑠がそれを好んで食べているのを見て、密かに心に留めておいた。

逸風の作る料理は味が濃いめだが、安瑠はここ数日、不思議なほど薄味の食べ物を好むようになっていた。これらの香りを嗅ぐだけで胃がむかつくのだが、逸風が長い時間かけて作ってくれた料理だと思うと、胃の不快感を必死に抑え、箸を取って、比較的薄味の料理を選んで口に運んだ。

「逸風兄さんの腕前は私よりずっと上手ね」安瑠の食欲はあまり良くなく、さっきたくさんの杨梅を食べたこともあって、今はそれほどお腹が空いていなかった。野菜を少し食べた後、彼女は箸を置いた。

逸風はテーブルの上でほとんど手をつけられていない肉料理を見て、安瑠の前にある半分以上なくなった野菜皿に目をやると、瞳に思案の色が浮かんだ。

別荘でしばらく過ごした後、逸風は会社からの電話を受け、相手に数言葉を交わした後、申し訳なさそうな表情で安瑠に別れを告げ、その場を去った。

安瑠はテーブルの上の物を片付けながら、普段なら自分が好きな肉料理を見て、食べないのはもったいないと思い、箸を取って排骨を一切れ口に入れた。

口の中に広がる油っこい味覚に眉をひそめ、胃からのむかつきが喉元まで上がってきた。

安瑠はすぐにその排骨を吐き出し、ゴミ箱の横に駆け寄って吐き始めた。

「おえっ……」

しばらく吐いたが、結局出てきたのは少しの胃液だけだった。胃の不快感はまだ続いており、彼女はゴミ箱の横でしばらく体を休め、ようやくその吐き気を抑えることができた。

彼女の小さな顔は少し青ざめ、胃を押さえる小さな手の関節が白くなっていた。そして力強く濁った息を吐き出した。

「もしかして数日前に水に落ちたせいかしら?」不快感はすぐに消えたので、安瑠はそれほど気にせず、水に落ちた後の後遺症だと思い、テーブルの上の食事の片付けを続けた。

「どうして彼女は吐いたんだ?」暗がりに隠れていた森斉史は安瑠の一連の反応を見て、好奇心を持って森里竹に尋ねた。

里竹も困惑した表情で、斉史の質問を聞いて考え込んだ後、かなり無理のある答えを返した。「もちろん何か変なものを食べたからだよ。若奥様がさっき何か食べてすぐ吐いたのを見なかったのか?」

そう言いながら、「こんなことも分からないのか」という表情で斉史を見下した。