第256章 武内衍この狂人！

うわっ！

こんな簡単に開いたの？！

永川安瑠は先ほどまで閉まっていたはずのドアを見て、まるで一万個の小さな瓢箪が頭の中を駆け抜けていくような感覚に襲われた。

「見つけた！あそこにいる！」追っている人たちは廊下の両側から安瑠に向かって走ってきていた。

安瑠はざっと見回して、なんと十数人もいることに気づいた。くそっ！

彼女はもう躊躇わず、背後のドアを押し開けて中に滑り込み、「バン」という音を立ててドアを閉めた。

しかし安瑠はすぐに気づいた。このドアは壊れているのだ。だからこそ、開いたり閉まったりしていたのか。くそっ、これじゃあ追っている連中に捕まってしまう！

安瑠は死にたいほど絶望的な気分になった！

彼女は素早く部屋を見回し、最後に目が浴室のすりガラスのドアに止まった。急いでそこに向かい、浴室のドアを開けて中に入った。

安瑠は浴室のドアを閉め、少し安堵のため息をついた。しかしその安堵もつかの間、追っていた人たちが部屋に入り込み、あちこち探し回る音が聞こえてきた。

このままでは数分もしないうちに捕まってしまうだろう。

今どきの女性は本当に恐ろしい。低評価をつけただけで、人を雇って彼女を拉致しようとするなんて。女らしさというものはないのか？一対一で勝負すればいいのに。

安瑠は足からハイヒールを脱ぎ、少しずつ後ろに下がった。もし見つかったら、このハイヒールを武器にして何人かを気絶させられるはず。そうすれば、逃げ出せる可能性はぐっと高まる。

彼女の背後にはカーテンがあったが、緊張のあまり安瑠は背後から聞こえる水の音に気づかず、緊張しながら一歩一歩後退し、ついにカーテンの中に入ってしまった。

カーテンの内側は外と違って湯気が立ち込めており、走り回って汗ばんでいた安瑠は蒸し暑さを感じた。

待てよ、なぜこんなに暑いんだ？

安瑠はようやく気づき、ハイヒールを握った手が一瞬止まり、振り返った。

彼女は、たとえ見るのがスタイル抜群で美しくセクシーな女性でなくても構わないと思っていた。女性なら、美しくてもなくても、セクシーでもなくても、どうでもいい！

しかし！！

この浴槽の中の人は誰だ？！

安瑠は壁に寄りかかって血を吐きたい気分だった。世界はこんなにも狭いのか、彼女が人から隠れようとしただけなのに、彼の前に飛び込んでしまうなんて……