第43章 屈辱、病気に感染するのが怖い

「あまり考え込まないで」撮影監督が慰めた。「明後日、あなたが希望しているキャラクターのオーディションがあるから、時間通りに来てね」

「もういいです。私にはもう機会がないでしょう」春野鈴音は断った。

木村冬真が監督なのだ。彼女が選ばれるはずがない。

「自暴自棄にならないで。君はただ運が足りないだけだよ」撮影監督は励ました。

鈴音が撮影監督の佐々木明正と知り合ったのも、前回彼女が出演した作品で彼と一緒に仕事をしたからだった。

明正は彼女が撮影中に非常に頑張り屋だと感じ、少し印象に残っていた。

その後、彼女が何度かオーディションで落とされるのを見て、さらに印象が深まった。

今回ここで食事ができたのも、明正が彼女を紹介してくれたからだ。今日はキャスティングディレクターもいて、彼女の印象も悪くなかった。もし木村冬真と出会わなければ、彼女はドラマの小さな役を手に入れられたはずだった。

明正の言うとおりだ。

彼女は確かに運が足りなかった。

運もコネもない人間は。

どれだけ努力しても、成功する確率は低い。

「あなたに迷惑をかけたくないんです。木村監督は私のことをあまり好きではないみたいで」鈴音は遠回しに言った。

みたいでなんかじゃない。

事実だ。

キャスティングディレクターが主要な決定権を持っているとはいえ、ドラマのキャスティングは結局、大物監督の一言で決まる。

彼女は本当に明正を困らせたくなかった。

明正はいい人だ。

彼が無条件で彼女を助けているわけではないことも、彼女は知っていた。

彼は彼女に少し好意を持っている。

ただそれを表に出していないだけだ。

結局、明正には彼女がいるのだから。

とはいえ、芸能界はいつも複雑だ。

明正はため息をついた。木村冬真の鈴音に対する態度は、彼にも見て取れた。

確かに。

撮影現場で最も敵に回してはいけないのは監督だ。

彼もただの雇われ人に過ぎない。

「次にいい役があったら、必ず君のために注意しておくよ」明正は約束した。

明らかに今回は彼にもどうすることもできなかった。

「ありがとう」鈴音はお礼を言った。「早く戻ってください。私はもう行きます」

「送ろうか?それともタクシーを呼ぼうか?」

「大丈夫です。自分で帰れますから」