第48章 深谷千早がネックレスにこだわる理由

深谷千早は浴室のドアの方向を見つめていた。

彼女が髪を乾かそうが乾かすまいが、彼に何の関係があるというのだ!

この人はどうしてそんなに余計なことに口を出すのだろう?!

彼女はあえて乾かさないことにした。

それどころか、彼の枕の上で二回転して、枕をびしょ濡れにしてやろうと思った。

思い立ったが吉日。

千早は藤原宴司側に飛びかかり、彼の枕を抱えて、その場でくるくると回った。

彼女の稼ぎ道を断つなんて!

彼のために命を削って働かせるなんて!

千早は転がりながら。

突然、目の前に人影を感じた。

顔を上げると、宴司がベッドの横に立ち、冷たい表情で彼女の奇妙な行動を見つめていた。

「てんかん発作か?」彼は眉を上げた。

「……」くそっ。

この男を殺してやりたい!

宴司は腕時計を外してベッドサイドテーブルに置き、再び浴室に入った。

千早は自分が寝る側に戻った。

結局、髪を乾かさなければ、翌日頭痛に悩まされるのは自分だ。

彼の一言のために、自分の体を痛めつける必要はない。

しかし突然、ドライヤーが浴室にあることを思い出した。

千早は深呼吸した。

宴司は彼女の天敵なのだろう。

彼女はベッドに座って待つことにした。

幸い、宴司の入浴は早かった。

彼のすることは基本的に手際がいい。

宴司が浴室のドアを開けると、彼女はドライヤーを取りに行こうとしたが、宴司の手にはすでにドライヤーが握られていた。

彼の髪はもう乾いているはずなのに?!

不思議に思っていると、宴司はドライヤーをコンセントに差し込み、そのまま彼女の頭に向けて風を当て始めた。

「……」幻覚でも見ているのか?!

「深く考えるな」宴司は言った。「お前がまた俺の枕を濡らすのが怖いだけだ!」

千早は白目を向けた。

彼に少しは良心があると思ったのに。

今日彼女の稼ぎ道を断った行為に対して、少し罪悪感を感じて、償おうとしているのかと思った。

宴司に期待しすぎてはいけない。

いつも不意打ちを食らわせてくる。

例えば。

宴司が口を開いた。「『愛おしの』のネックレスは……」

突然、彼の電話が鳴った。

宴司はベッドの方を見た。

画面に表示された発信者を見て、ドライヤーを千早に渡した。「自分で乾かせ」

そして電話に出た。