第85章 出勤（1更）_2

しかし彼女は断った。

自分の会社にもまだ山ほど仕事があるので、少し時間が必要だった。

そこで来週の月曜日、つまり今日から出社することに決まった。

久しぶりにこんなに早く起きた。

薄化粧をしても、深谷千早は自分の疲れが隠せないと感じていた。

ドアを開けると、藤原宴司がリビングにいて、彼女を待っているようだった。

「今日から出社するのか？」宴司が尋ねた。

千早は無視した。

これは彼が要求したことではないか？！

「朝食を食べたら一緒に行こう」宴司が言った。

「結構です」千早はダイニングテーブルに座って朝食を食べながら言った。「前に話し合ったように、会社では知らない人のふりをします。私たちが結婚していることは外部の誰も知らないし、今は離婚しようとしているのだから、なおさら他人に知られるべきではありません」

宴司は薄い唇を固く閉じた。

何か言いたいことがあるようだったが、言うのをやめたようだ。

「そういえば」千早は突然思い出した。「以前、私たちが結婚した時、あなたの家族、特にお母さんは私が働くことに強く反対して、藤原家の若奥様は外で顔を晒すべきではないと言っていました。今、私があなたの会社で働くのはあなたの要求ですから、あなたのお母さんに事前に説明しておいてほしいです」

「すでにしてある」宴司は答えた。

千早もそれ以上は言わなかった。

宴司の仕事の几帳面さを疑うべきではなかった。

「これ、あなたの社員証」宴司は突然千早に渡した。

千早は少し驚いた。

宴司が直接渡してくれるとは思っていなかった。

「ありがとう」

二人は黙って朝食を終えた。

朝食後、宴司は専用の運転手が迎えに来た。

千早は自分で小さなBMWを選んで藤原蘭ジュエリーへ向かった。

会社の地下駐車場に入るとすぐに、周囲から多くの視線を感じた。

彼女は気にせず、車を停めてから会社のビルに入った。

バッグから社員証を取り出し、カードゲートに向かうと、すでに顔認証が設定されていた。

彼女はスムーズに会社に入った。

千早は自然と従業員用エレベーターに向かった。

しかし出勤時間だったため、従業員が非常に多かった。

千早は混雑したエレベーターに乗り込めなかった。

そのとき。

宴司が彼らの後ろに現れた。

「藤原社長、おはようございます」