「ただ単純にあなたたち二人が似合うと思っただけよ」小林温子は食い下がった。
「……」
深谷千早は完全に言葉を失った。
「温子、お客様の接待をしなさい。ここで何をデタラメ言ってるの!」秦野汐子が突然近づいてきた。
小林文雄は単独で接待に行っていた。
「だってこんなに大勢の人を接待するなら、私が一人増えても減っても変わらないじゃない。それに小林夫人、もしかして藤原宴司がここにいるから、わざわざ来たんじゃない?しかもこんな言い訳して、全然上手くないわよ……あっ!」温子は悲鳴を上げた。
汐子は彼女を一発叩き、叱りつけた。「礼儀知らず、分別がないわね」
あなたは高潔ぶって、偉そうにしてるけど。
若い男性を見る時は、人に何も言わせないつもりなの?
「今、木村冬真と誰が似合うって話してたの?」汐子は尋ねた。
「温子よ。お母さんも彼らが似合うと思わない?」温子はすぐに答えた。
「こんな楽しい日に、あなたを平手打ちにしたくないわね」汐子は脅した。
温子は黙り込んだ。
汐子は藤原宴司の方を向いた。「木村冬真はあなたの従弟なの?」
「はい」宴司は答えた。
「彼は独身?それとも……」
「おそらく独身です。今のところ彼に彼女がいるという話は聞いていません」
「なかなかの好男子ね。本当に久しぶりに見たわ。あなたと一緒に来なかったら、もう見分けがつかないところだったわ」汐子は満足げに頷いた。「温子、あなたと冬真は同級生だったわよね?二人はかなり親しいんじゃない?」
「お母さん、何を企んでるか分かってるわよ。言っておくけど、私と彼の間に可能性はないわ。私は彼のタイプが好きじゃないし、それに彼には想い人がいるの」温子は急いで言い訳した。
「想い人?」
「とにかく、勝手に縁結びしないでよ」
汐子がまだ何か言おうとした時。
千早が口を開いた。「伯母さん、冬真と温子は確かに合わないと思います」
汐子は千早がそう言うのを聞くと、すぐに態度を変えた。「じゃあ、彼の話はもうやめましょう」
「……」温子は不満そうな顔をした。
つまり自分は実の娘じゃなくて、千早こそが本当の娘なんだ。
自分の十の言葉より千早の一言の方が効くなんて。
「ところで、私のこのダイヤモンドセットはどう思う?」汐子は自ら話題を変えた。
そう言うと、喜びを隠せない様子だった。