第125章 徳永颯の積極性

深谷夕遅の春野鈴音に対する感情は、ずっとあまり良くなかった。

彼女は鈴音が自分より美しいことを妬んでいるわけではなかった。結局、芸能界で生きていく人間が、少しの美貌もなしにどうやってやっていけるというのだろう?!そんなことで比べるなんて、自ら恥をかくようなものだ。

しかし彼女の家柄や環境は、芸能界の役者たちが遠く及ばないものだった。

夕遅は鈴音に対して具体的になぜ良い印象を持てないのか、自分でもうまく説明できなかった。木村冬真はさらに鈴音を嫌っていて、あの撮影現場での出来事から、冬真が鈴音に対して意地悪をしていたことを感じ取ることができた。冬真がいなければ、鈴音もここまで落ちぶれることはなかっただろう。

彼女はただ鈴音の後ろ姿を見つめていた。

彼女が誰かを誘惑しているようには見えなかった。露出の多い服装でもなく、KTVの制服シャツも一番上のボタンまできちんと留めていた。他の店員の中には胸元までボタンを開けている者もいるというのに。

彼女のスカートは確かに短かったが、彼女は本当に注意深く、少しの露出もなかった。その制服は彼女が着ると、どこか清純な雰囲気さえ漂わせていた。

夕遅は鈴音のことにあまり心を砕かなかった。重要でない人には、彼女はあまり関心を払わないのだ。

彼女は振り返って冬真を見た。

冬真は藤原宴司と酒を飲んでいた。

宴司の瞳は時々、深谷千早の方を見ていた。

そのとき、徳永颯が近づいてきた。

本来なら颯はディナーの後で帰るつもりだったが、彼女が無理に誘って一緒にここで飲もうと言ったのだ。彼女は一人では気が引けると言い、颯は仕方なく彼女について個室に来たのだった。彼は千早とだけ親しいのではないだろうか?!

以前から颯は千早にとても優しかったが、それも表面上の気遣いに過ぎなかった。彼は千早のために何か良いことを言う勇気もなかった。もちろん、養子である彼は、元々深谷家ではあまり地位がなかったのだ。

「どうしてここに来たの?」千早は本当に驚いていた。

颯はこういう場所にはめったに来ない。彼は自分に対して厳しすぎるのだ。医者だからかもしれないし、人の家に身を寄せている立場だからかもしれないが、彼は自分を甘やかすようなことはほとんどしなかった。

「ふと来てみたくなったんだ」颯は言った。

千早は黙ってうなずいた。