第139章 忘れられない白月光(二更)

春野鈴音は目を開けると、すぐに木村冬真のハンサムな顔と向き合うことになった。

ほんの一秒だけ、冬真は顔を背けて離れていった。

鈴音は少し呆然とした。

少し現実感がなかった。

冬真の冷淡な声が聞こえた。「起こそうと思ったところだ。早く準備しろ、私の時間を無駄にするな」

「あ、はい」鈴音は我に返り、急いで携帯のアラームを止めた。

寝坊するのが怖かったのだ。

彼女はベッドから出て浴室に行き、顔を洗って目を覚ました。

浴室の鏡を見ていると、ふと我を忘れた。

さっきのあの一瞬、彼女が目を開けた瞬間、冬真の若かりし頃の眼差しを見たような気がした。まるで深い感情が込められていたような…

見間違いだろう。

まだ朦朧としていたから、もしかしたら夢を見ていたのかもしれない。

鈴音はそれ以上気にすることなく、素早く身支度を整えると、冬真と一緒に出かけた。

車内では二人とも死んだように静かだった。

華やかで壮麗な藤原グループに到着した。

彼らはスタッフに案内され、彼らのために用意された作業スペースへと向かった。広々とした会議室には、いくつものメイクルームが区切られていた。

鈴音は到着するとすぐにメイクアップアーティストについて行き、メイクをしてもらいながら、あらかじめ用意されていたスーツに着替えた。

彼らが到着してすぐ、藤原宴司と深谷千早も現れた。

冬真は少し驚いた様子で「こんなに早く来たのか?」と尋ねた。

「早めに来て何か手伝えることがないか確認しようと思って。あなたの撮影スケジュールに支障が出ないようにね」千早は答えた。

「ああ」冬真も遠慮することなく受け入れた。

千早がいれば、本当に多くの面倒が省ける。

「ところで、さっきのあの人は…」千早はあるメイクルームを見て、「鈴音?」

冬真の表情がわずかに変化した。

彼は説明した。「こういう細かい仕事は、普通の俳優は受けないんだ。彼女なら大丈夫だろう」

千早はそれ以上質問しなかった。

もちろん、冬真が言うほど何気ないことだとは思っていなかった。

理屈から言えば、冬真は鈴音を憎んでいるはずで、彼女に仕事を回すなんてあり得ないはずだった。

準備が進む中、千早は後方支援のスタッフに朝食を買ってくるよう頼んだ。

こんなに早くから仕事をするなら、ほとんどの人は朝食を食べていないだろう。