第153章 藤原一族の宴会(10)制御不能

藤原宴司は席に座ったまま、微動だにしなかった。

顔は炭のように真っ黒だった。

白井香織は隣で、まだ胸がドキドキしていた。

さっきは本当に宴司が壇上で彼と深谷千早の夫婦関係を公表するかと思った。今でもまだぼんやりとして、結局宴司と千早のどちらが公表したくなかったのか分からない。

でもとにかく、公表されなくて良かった。

そうでなければ、彼女への影響は計り知れないものになっていただろう。

彼女は目を向けて宴司を見た。

宴司はステージから降りてからずっと不機嫌な顔をしていて、明らかに機嫌が悪いのが感じられた。

それは...千早が彼らの関係を公表しなかったからなのか?!

香織は深く考えたくなかったし、考える気もなかった。

ただ彼女にとって、千早と宴司が離婚しないことは時限爆弾のようなものだと分かっていた。このままじっと座って運命を待つわけにはいかない!

宴司はついに椅子から立ち上がった。

彼の背筋の伸びた姿が千早に向かって歩いていった。

千早はもう宴司が壇上に上がって彼女に賞を授与しないだろうと思っていた。

彼女は自分が彼を怒らせるようなことをしたとは思っていなかった。

まるで彼に何百万も借りているかのような顔をして、誰に見せているのだろう。

「藤原社長にお願いして、深谷さんに最優秀社員賞のトロフィーと巨額の賞金を授与していただきます!」司会者は情熱的に言った。

宴司は受付嬢からトロフィーを受け取り、千早に手渡した。

そして賞状も取り出した。

賞状には「賞金500万円!」と大きく書かれていた。

会場全体がこの高額な賞金を見て驚きの声を上げた。

藤原グループは本当に、財力がすごい!

会場では再び熱烈な拍手が起こった。

司会者は注意して言った。「藤原社長と深谷さん、もう少し近づいてください。カメラマンの準備をお願いします、記念撮影です。」

司会者がそう言うと、会場の他の人たちも気づいた。千早と宴司の間には本当に大げさな距離があり、まるでこの二人がとても疎遠であるかのように感じられた。

下の方で誰かが言った。

「藤原社長は本当に男性の道徳を守っているわね。彼と深谷さんの距離を見て、白井さんに誤解されないようにしているんでしょうね?!」