彼は自分がどれだけ飲んだのか分からなかった。
今、頭の中の記憶はすべて断片的だった。
しかも今、胸がとても苦しく、まるでそこに火の塊が押し付けられているようで、発散したいのに発散の仕方が分からない。口の中もカラカラに乾いていて、冷たい水で内なる熱を冷ましたい...言葉にできない欲望のようなものもあった。
以前も酔ったことはあったが、こんな感覚はなかったはずだ!
徳永颯が起き上がると、その瞬間、床に倒れている深谷千早が目に入った。
千早がなぜ目の前にいるのだろう?
彼女は帰ったはずでは?
それなのに彼が電話をかけても出なかった。
颯は自嘲気味に笑い、つぶやいた。「幻覚まで見えるようになったか」
「幻覚じゃないわ、徳永颯」千早も彼が目覚めたのを見ていた。
彼女は大きな声で話そうとしたが、出てくる声は弱々しく、力がなかった。
今、床に倒れている彼女は、起き上がろうとしても非常に困難だった。
颯は一瞬固まった。
おそらく今の状況が現実なのか幻なのか確認しているのだろう。
「あなたは今夜酔っぱらって、私があなたを迎えに来たの。でも途中で何かあって、気がついたらここにいたわ。ここはホテルみたいね」千早は息も整わないまま言った。「今はまだ私たちの間に何が起きたのか思い出せないけど、誰かに罠にはめられたと思う」
「罠?」颯はますます理解できなくなった。
「とりあえずここから出ましょう」千早はこれ以上説明したくなかった。
彼女はベッドの側面につかまりながらゆっくりと立ち上がった。
颯もベッドから降りた。
彼も千早のように床に倒れてはいなかったが、体にはあまり力が入らなかった。
二人はドアに向かって歩いた。
しかしドアは外から鍵がかけられていた。
千早は全力を尽くしても開けられなかった。
颯も何度か引っ張ってみたが、まったく開かなかった。
二人はドアを叩いたが、外には誰もいないようだった。
千早は部屋で携帯電話を探した。
彼女と颯の携帯電話は見つからず、ホテルの客室サービスの電話もなかった。
千早はますます状況が怪しいと感じた。
額から汗が止まらなく流れ、体の感覚もどんどん奇妙になっていった。
千早だけではなかった。
颯も同じだった。
彼の千早を見る視線はますます熱を帯びていった。