「気に入らない?」藤原宴司は深谷千早がなかなか花束を受け取らないのを見て、眉をしかめた。
「恐縮です」千早は受け取った。
そして考えた。こんな大きな花束を抱えて、どこに置こうか。
その瞬間、宴司が彼女の手から花束を取り上げるのが見えた。
千早は眉をひそめた。
この人は何がしたいんだ?!
「そこに置いて、こっちに来て朝食を食べなさい」宴司は花束をさっと隣の棚に置いた。
「無駄だと思わない?」千早は彼に尋ねた。
ただ彼女にちょっとしたサプライズを作るため?一分もたたない小さなサプライズ。
「君に関しては、無駄なことなど一度もない」宴司はゆっくりと言った。
それはあなたが買いに行ったわけじゃないからでしょ?!
明石和祺がこんな大金持ちの社長に出会うなんて、お気の毒に。
「ただ、ロマンチックなだけだ」宴司は突然付け加えた。
「ゴホゴホゴホ!」
千早は宴司の言葉にむせそうになった。
こんな気持ち悪いセリフ、彼はどうやって口にしたんだ?!
これが以前のあの冷酷で毒舌、時々不機嫌な顔をしていた宴司なのか?!
しかし千早が宴司と目を合わせて何か言おうとした時、口に出かかった言葉を飲み込んだ。
宴司のあの顔は欺瞞性が強すぎる。
他の男性がこういうことをすれば、気持ち悪いと感じるだろう。
でも彼の場合は、ただ過度にかっこいいと思うだけだ。
千早は視線をそらした。「朝食にしましょう」
彼女はダイニングテーブルに向かった。
宴司は大股で彼女の後ろについて行き、千早が椅子を引いて座ろうとした時、長い指の大きな手が直接彼女のために椅子を引いた。
千早は一瞬固まった。
「どうぞ」宴司は紳士的だった。
千早は深呼吸して、座った。
彼女は宴司がこの異常な状態をいつまで続けるのか分からなかった。
「どうぞ」
宴司は熱心にサンドイッチを千早の前に置いた。
千早は少し焦げたサンドイッチを見て、疑問の余地もなく尋ねた。「あなたが作ったの?」
「初めてだ」宴司はまだ誇らしげだった。
彼女は食中毒が心配だった。
しかし宴司の積極性を挫かないように、千早はサンドイッチを手に取り、大きく一口かじった。
味は。
表現が難しい。
美味しいと不味いの間だった。
彼女には一体どこに問題があるのか分からなかった。