第126章 藤原宴司が公衆の面前でキスする(一更)_2

「千早、教えてくれないか?」徳永颯の期待に満ちた瞳が、ずっと私を見つめていた。

その目は赤く潤み、薄い水気を帯びていた。

あの夜以来、彼女と颯は距離を置いていた。颯も彼女に近づくことはなかった。彼は決して強要せず、彼女が嫌だと言えば、必ず従ってくれた。

8年の時が流れたのに、彼は突然執着を見せ始めた。

酔っているのだろうか?!

それとも心の中でずっと抑え続けていたものが、ずっとずっと抑え込まれていて……

「教えたところで、何か変わるの?」

背後から、突然藤原宴司の声が聞こえた。

深谷千早は背後に大きな人影が立つのを感じた。

彼女は振り向かなかった。

唇を何度も噛みしめた。

口まで出かかった言葉は、結局飲み込んだ。

宴司は颯に問いかけた。「真実を知ったところで何になる?彼女は今、私の妻だ」

颯の表情が冷たくなった。

千早は彼が本当に怒るのを見るのは珍しかった。

「これだけ長い間追いかけもせず、今さら目覚めたところで、誰を責められる?『遅すぎた深情けは草より軽い』というだろう」宴司は千早の手を引き、「徳永颯、お前のいわゆる愛とはそんなものか」

言い終わるや否や、宴司は千早の手を引いて立ち去った。

二、三歩歩いたところで。

宴司は振り返った。

彼は颯が千早の手をしっかりと握っているのを見た。

宴司の表情が一瞬で険しくなった。

「千早、彼と行かないで」颯は言った。声は断固としており、彼女の手を握る力も強かった。

「離して」千早は本能的に颯を押しのけようとした。

しかし颯はさらに強く握りしめた。

今回は。

手放したくなかった。

そう。

彼は後悔していた。あの時、何も言わずに去ってしまったことを深く後悔していた。

彼はきちんと確かめるべきだった。

千早は決してそんなに簡単に心変わりするような人ではない。

彼女にはきっと苦衷があったはずだ。

なのに彼はその瞬間、千早に意地を張ることを選び、真実の答えを得ないまま、背を向けて去ってしまった。

千早に無理強いしたくなかったというより。

むしろ、彼はその時、自分と千早が本当に別れることになるとは考えもしなかった。

二人の間の感情が、あの瞬間に完全に壊れてしまうとは。

学校に戻ってからも、彼は必死に勉強し続けた。