第081章 元カレVS現旦那

夫婦二人が周りを気にせずイチャイチャしている光景は、本来なら何でもないことだが、意地悪な人の目には、それは露骨な皮肉に映る。

榎本剛は今日休みで、柴田恵美は最近ずっと睡眠の質が良くなかった。この薬局には有名な漢方医がいて、それに対して良い方法を持っていた。

榎本剛と柴田恵美が車から降りると、薬局の入り口でイチャついている二人が目に入った。

剛は何も言わず、その目障りな二人に向かって突進した。

恵美はまだ剛に支えられて薬局に入るのを待っていたが、顔を上げると、息子が狂ったように前に走り出し、彼女のことを全く気にしていないのを見た。

「あら、息子よ、そんなに速く歩かないで、お母さんついていけないわ。どうしたの?私を支えてよ、息子!」

恵美はよろめきながら彼の後ろについて行き、剛の背中に向かって叫んだ。

剛は聞こえていないかのように、今田由紀と佐藤陸の前まで急いで歩き、背の高くたくましい体が一気に由紀の目の前に立ちはだかった。由紀は少し驚いて顔を上げた。

「あなた?榎本剛、あなた…」

「今田由紀!」剛は歯ぎしりして怒鳴った。声は冷たく温度がなく、その鋭い黒い瞳は由紀と陸を睨みつけていた。もしその視線が人を殺せるなら、今頃由紀と陸の体には何個もの穴が開いているだろう。

彼のこの激怒して不倫現場を押さえに来たような態度に、陸は非常に不快感を覚えた。サングラスの奥の瞳が思わず剛に向けられ、目に凶暴な光が走った。

彼は心の中で榎本剛というこのクズ男が気に入らなかった。もし由紀がここにいなければ、おそらく一発で剛の頭を砕いていただろう。

しかし、今は由紀が彼の隣に立っているので、陸は何も知らないふりをして、自分の妻の手を優しく握り、優しく尋ねた。「可愛い奥さん、この人は誰?知り合い?」

「え?」由紀は陸が他人の前でも彼女を「可愛い奥さん」と甘く呼ぶとは思っていなかった。「奥さん」という呼び方だけでも彼女を赤面させるのに十分だったが、特に前に「可愛い」という甘ったるい言葉が付くと余計に恥ずかしかった。

陸が由紀をそう呼ぶのを聞いて、剛の元々暗い表情がさらに崩れ、拳を握りしめ、怒りに満ちた声で陸に向かって叫んだ。「本当に気持ち悪い!」