第058章 榎本剛が医療費を払ったのね！

「いいわよいいわよ！本当に素晴らしいわ、本当に道枝真凛なの？お母さんは真凛お姉さんの大ファンなのよ、お母さんが真凛お姉さんを見たら絶対に喜ぶわ！」

今田由紀は長いまつげをパチパチさせながら、とても可愛らしく甘い笑顔をその人に向けた。

道枝真凛のマネージャーは少し頭が痛くなり、心の中で思った。まさにあなたのお母さんが好きだからこそ、私たちの真凛が病院に来て患者のふりをしているんじゃないですか？

しかも同じ病室に配置して、あなたのお母さんが昼も夜も真凛と過ごせるようにしているんです。

これは全部ボスの指示だ。そうでなければ、誰が元気なのに病院になんか行くものか！

由紀は佐藤陸を押して病室に入った。中は外のように混雑してはいなかった。彼女と一緒に入ってきたのは、先ほど外で彼女と話していたマネージャーだけだった。そして、今、女優の道枝真凛が確かに今田お母さんの隣のベッドに横たわっていた。

「本当に道枝真凛だわ！すごい！」

陸は無関心に尋ねた。「道枝真凛って誰？」

由紀は彼の耳元で小声でささやいた。「真凛は今一番人気の女優よ。お母さんは彼女のドラマをとても好きで見ているの。まさかここで会えるなんて思わなかったわ。私もすごく興奮してる！」

「ふーん...」陸はあっさりと頷いた。

今田お母さんはベッドに横たわっていた。先ほど真凛が入ってきたとき、彼女はとても覚醒していたが、真凛が病室に運ばれてくるのを見て、一時的に感情が高ぶり、緊張して言葉が出なくなっていた。

しかし真凛はスター気取りなど微塵も見せず、彼女と会話を始めた。今田お母さんは彼女と一緒におしゃべりをして、気分が特に良くなった。

しばらく話した後、体が疲れて少し眠っていたが、今、かすかに娘の由紀の声が聞こえ、すぐに目を開けた。目に涙を浮かべ、震える声で呼んだ。「由紀！由紀...」

「お母さん——お母さん、本当に目を覚ましたのね、本当に大丈夫なのね、よかった、お母さん、私すごく嬉しいわ、どれだけ怖かったか分かる？うぅ、お母さん...」

由紀は泣きながら今田お母さんのベッドの側に飛び込み、手をしっかりと握りしめた。

今田お母さんは、もう二度と娘に会えないと思っていた。

しかし、こうして彼女に会い、触れ、声を聞くことができる日が来るとは思わなかった。