佐藤陸は車椅子に座り、ベッドの上で自分勝手に騒いでいる今田由紀を見つめながら、笑顔でベッドに上がり、手を伸ばして彼女を自分の腕の中に引き寄せた。
由紀の体は陸の胸に横たわり、ふわふわした頭を乗せていた。彼女は両手で陸の腕をつかみ、満足そうに口を開いて笑った。「陸兄さん、いい匂いがするね、本当にいい香り!」
「お世辞が上手だな、俺の気を引くのが上手いな。早く起きないのか?仕事に間に合うのか?」
陸は由紀を抱きしめて、もう少し温もりを感じていたかったが、彼女は彼の言葉を聞くとすぐに目を見開いて目が覚めた。「あ—今何時?八時半?やばい、遅刻しちゃう!」
「慌てるな、ゆっくりして...」陸は彼女の腕を引っ張った。彼女がぼんやりしたまま彼の腕から飛び出そうとして、ベッドから落ちそうになったからだ。
由紀はベッドサイドテーブルの目覚まし時計を見て、それを手に取り、恨めしそうに指で突いた。「どうしてこれ、鳴らなかったの?昨日ちゃんとセットしたのに。壊れてるの?遅刻しちゃう、もう八時半過ぎてるよ、どうしよう、どうしよう?」
由紀は彼の腕から抜け出し、手にしていた目覚まし時計をベッドに投げた。
幸いにも、ベッドの横には陸が彼女のために用意しておいた服があった。彼女は素早く薄緑色の夏用スポーツウェアを身にまとった。
ベッドから飛び降りて浴室に駆け込み、3分後、洗顔を終えて出てきた彼女は陸に向かって叫んだ。「陸兄さん、この服...」
陸は車椅子を動かして彼女の側に来た。サングラスの奥の瞳は彼女の全体をはっきりと見ることができた。
彼女がこの緑色のスポーツウェアを着ると非常に爽やかで可愛らしく見えた。重要なのは、スポーツウェアが彼女の完璧なスタイルと白い肌を全て隠してくれることで、これが陸にとって最も満足できる点だった。
「服がどうかしたか?気に入らないのか?もし気に入らないなら、細田に今日また何着か買いに行かせることもできるぞ」
「そうじゃないの、ただ、もう仕事に行くんだから、スカートとか着た方がいいかなって思って。どう思う?そっちの方が女性らしくて、そうしないと主任にまた怒られちゃうよ!」
由紀は自分の着ているスポーツウェアを引っ張りながら、昨日の主任の視線を思い出し、眉をきつく寄せた。