第165章 浅浅が流産した

今田由紀は手に持っていたトマトを脇に投げ捨て、叫び声を上げると、その後自分の華奢な体で佐藤陸の前に立ちはだかった。

陸は眉を上げ、不賛成の様子で手を伸ばして彼女を引き戻そうとした。「いい子だから、戻っておいで！」

「いやです！どうして陸兄さんをいじめるの？あなたってどうしてこんなに理不尽なの？まさか彼を殴ろうとしてたの？！」

由紀はまったく自分の目を疑った。彼女がちょっと離れていただけで、陸兄さんは悪い女に虐められていたなんて！

もし今戻ってこなかったら、今頃陸兄さんはこの女に殴られていたに違いない！

その女は由紀という正常な人を見て、さらに彼女が陸を「陸兄さん」と呼ぶのを聞いた。

二人が一緒にいることを知り、さらに傲慢な口調で言った。「あなたは彼の妹さんね。あなたのお兄さんは先ほど私の息子を殴ったのよ。息子はまだこんなに小さいのに、よくもそんなことができたわね。今、息子は彼に殴られて体中が痛いし、精神的にもおかしくなってるわ。息子を病院に連れて行かなきゃならないから、あなたたちが費用を出しなさい！あなたは彼の妹で、彼は障害者だけど、あなたは普通の人でしょう？ちゃんと聞こえて見えるでしょう？お金を払いなさい。払わないなら今日はあなたたちとは終わらないわよ！」

由紀は目を見開き、手をきつく握りしめ、口は怒りでぷくぷくと膨らんでいた。

この女は陸兄さんの前で彼のことを障害者と呼ぶなんて、なんて悪い人なの？！

こんな風に陸兄さんを傷つけるなんて、絶対に許せない！

「陸兄さんは子供をいじめたりしません。あなたは彼が息子さんをいじめるのを実際に見たんですか？！」

「私は...息子が嘘をつくわけないでしょう？息子が彼に押されたと言うなら、絶対に彼よ！」女は強引に言い張った。

由紀は冷笑した。「あなたの息子は嘘をつかないけど、彼が嘘をつくっていうの？！彼は目が見えないのに、どうやってあなたの息子を押せるの？スーパーで買い物する余裕がないなら素直に言えばいいのに、スーパーの中で当たり屋みたいなことしないでよ！」

由紀は母子を睨みつけると、振り返って陸の車椅子を押そうとした。

今日は本来陸兄さんを喜ばせたかったのに、こんな不愉快なことが起きてしまった。全部自分のせいだ。陸兄さんをスーパーに連れてこなければよかったのに。

由紀は自分を責めていた。