第079章 ちょっと避けて

「あ、はい！」今田由紀は布団から出て服を着ようとしたとき、何も着ていないことに気づいた！

彼女は少し恥ずかしそうに頭を掻きながら佐藤陸に言った。「陸兄さん、服を着るわ！」

陸は相変わらず彼女の向かいの車椅子に座ったまま、笑って言った。「わかったよ！」

彼が去る気配がないのを見て、由紀はまた不自然な声で言った。「陸兄さん、服を着るって言ったの。あなた...ちょっと席を外してくれない？」

「え？妻よ、忘れたの？僕は見えないんだよ。僕のような盲人にとっては、昼も夜も同じで、何も見えない。だから安心して着替えていいよ。それに、仮に見えたとしても、僕はあなたの夫だよ。妻が夫の前で服を着るのに、夫が見ちゃいけないなんてことある？」

陸の唇が少し上がり、サングラスの奥の瞳に冗談めいた笑みが浮かんだ。

由紀はそれを聞いて、確かにその通りだと思った。

彼女はどうしたんだろう？

彼女はどうして忘れていたのだろう、彼女の夫は盲人で、彼女を見ることができないのだ。

由紀は頷いて言った。「陸兄さん、ごめんなさい。今着るわ」

「うん！」

由紀はベッドの上で腰を曲げて跪き、昨晩のパジャマを探し始めたが、ベッドの上には見当たらなかった。

一周探して、昨晩パジャマがベッドから床に蹴落とされていたことに気づいた。彼女は腰を曲げて床のパジャマを拾った。

この小娘は火照るような体つきで、本当に魅力的だった。

彼は先ほど彼女を覗き見るために残ったのだ。食べられなくても見るだけでも心が和む景色だと思って。

しかし思いがけないことに、この小娘の数回の単純な動きで彼は口が渇くほど見入ってしまった。

まさに自業自得だ。先ほど出ていれば、こんなことにはならなかったのに。

由紀はガウンを拾って身につけ、振り向いた途端、悲鳴を上げた。「あっ、陸兄さん、鼻どうしたの？鼻血出てるよ！」

陸は口角を少し引きつらせ、手で自分の鼻を拭うと、確かに鼻の下に二筋の湿った粘っこい真っ赤な血の跡があることに気づいた。

恥ずかしい！本当に恥ずかしい！

佐藤陸といえば、いつも生活に厳格で几帳面、冷たく傲慢な権力者だった。外の世界であれほど多くの女性たちが自ら彼の腕に飛び込んできたというのに。