「佐藤兄さん、あの写真や音声動画は全部偽物だったってこと?!本物じゃないの!!!」
今田由紀は驚いた目で佐藤大翔を見つめ、明らかに信じられない様子だった。
「ああ、全部偽物だ。俺もあの晩、道で偶然このボイスレコーダーを拾ったから、それで……」
大翔はあの夜、榎本剛が由紀に絡んだ時に、由紀が榎本の車の前に落としたボイスレコーダーを取り出した。
由紀の目は更に大きく見開かれ、震える手でボイスレコーダーを受け取ると、それをきつく握りしめ、顔を上げると目が真っ赤になり、瞳には涙が溢れていた。「佐藤兄さん、知ってる?これらのものが私をどれだけ苦しめたか知ってる?!これらのせいで私がどれだけ生きていけなくなりそうだったか知ってる?私は本当に……本当に自分が汚されたと思って、耐えられなかったの。毎日毎晩悪夢を見て……佐藤兄さん、どうしてあなたはこんな悪い女の兄なの!!!」
由紀は崩れた表情で、手を伸ばしてボイスレコーダーを車の窓から投げ捨てた。「全部あの女のせい、全部あの女がやったことよ。あの女は人を雇って私を誘拐したのよ、佐藤兄さん、あなたは今になって私に彼女を許せって言うの?!彼女があなたの妹だから、あなたは彼女を庇うつもりなんでしょ!彼女がやったことは全部犯罪よ、わかる?」
「由紀ちゃん、落ち着いて……」
大翔が手を伸ばして由紀を抱きしめようとしたが、由紀は彼の腕を力いっぱい払いのけた。
彼女は胸を引き裂くような声で高橋美奈を指さして叫んだ。「あなたは私の陸兄さんが欲しいの、夢見てるわ!死んでも許さない、絶対に許さないわ、絶対に陸兄さんをあなたに渡したりしない……」
「由紀ちゃん?!」大翔は彼女が何度も佐藤陸を手放さないと言う言葉を聞いて、心が酸っぱく、耐えられないほど痛んだ。
彼女は本当に自分の兄が好きなようだ。
「それにあなたも、佐藤兄さん、私に彼女を許させようなんて思わないで、うぅ……あなたは……あなたは彼女と一緒なの?あの時、私が犯人から逃げ出した時、あなたは……」