今田由紀が動き出すのを見て、男の目の中の得意げな表情はさらに強まった。
由紀の後ろ姿を見ていると、彼女を押し倒したくなる衝動に駆られた。
彼は由紀の体を回り込み、彼女の向かいのベッドに直接行って、大胆にも腰を下ろした。
足を組み、吐き気を催すような忌まわしい顔を上げ、由紀を見つめた。
後ろから見ると、由紀は服を脱ごうとしているように見えたが、正面から見ると、彼女は自分の背中にかけたショルダーバッグをずっと握りしめているだけだった。
「何をもたもたしてるんだ?!俺をだまそうとするなよ、さもないと……」
男の凶暴な視線が由紀の体に落ち、冷たい光が毒を塗った矢のように由紀の心を射抜いた。
由紀は少し青ざめた唇を噛みしめ、バッグの中で硬く冷たい物体に手を触れると、深く息を吸い込み、ゆっくりと男に向かって歩き始めた。
「お兄さん、私まだ若いし、私……こういうこと経験ないから、怖くて……」
「おや?もしかしてお前はまだ……はははは、これはいい、今夜こんな極上品を味わえるとは思わなかった。おいで、お前が分からないなら、お兄さんが教えてやるよ、おいでベイビー!」
悪漢は由紀の腕をつかみ、強引に引き寄せた。
彼の力があまりに強く、由紀は足元がふらつき、彼の上に倒れ込んでしまった。
彼の体から漂う男性特有の不快な体臭に由紀は吐き気を催したが、必死に堪え、息を止めながら、卑劣な男が彼女に手を出そうとした瞬間——
この時、卑劣な男の警戒心は最も薄れていた。由紀はタイミングを見計らった。
バッグから前もって用意していたフルーツナイフを取り出し、歯を食いしばり、目を閉じて、思い切り卑劣な男に向かって突き刺した!
「あっ——くそ!このクソ女め、痛ぇじゃねぇか!」
卑劣な男は由紀を抱きしめ、その柔らかな感触に心を奪われていたが、警戒心を完全に失ってはいなかった。
由紀がナイフで刺そうとした瞬間、彼は頭をひねり、首を刺す致命的な一撃を避けた。
しかし、卑劣な男も無傷ではなかった。首を傾けたため、ナイフはちょうど彼の耳の際に刺さり、彼の片耳を切り落としてしまったのだ!
鮮血がぷしゅっと飛び散った——