第267章 全員を始末する

「兄貴、大変だ!あの母娘が助け出されました。どうしましょう?!」

別のヨットで、夜間双眼鏡で状況を窺っていた部下は、今田由紀母娘が救助されたことを耳の切れた男に即座に報告した。

「くそっ、わざわざ救助に来たようだな。今回の仕事は本当に縁起が悪い…」

耳の切れた男がまだ次の指示を出さないうちに、携帯電話が鳴り始めた。

彼は画面の番号を見て、電話に出た。「もしもし—」

「どうなっている?人間は片付いたのか?!」

相手が詰問してきた。

「もう海に投げ込んだんですが、どこからか命知らずの若者が二人現れて、船に助け上げてしまったんです!」

「お前は何をしている?女二人すら始末できないのか?!」

相手は激しい言葉で怒鳴った。

「俺だって腹が立つよ。くそっ、あの女二人のために、俺の仲間を一人失ったんだぞ。森社長、この金は…」

「仕事もまともにできないくせに、まだ金が欲しいのか?!そんな約束じゃなかっただろう!もしあの女二人がまだ生きているなら、お前の金なんて地獄に落ちろ。お前の裏社会での評判も、これからは誰も仕事を頼まなくなるだろうな。自分で考えろ!」

「森社長、怒らないでください。やらないわけじゃないんです。彼女たちが二人の若者に船に助け上げられたんです。これは…」

相手は少し黙った後、毒々しく言った。「二人が助けようが、二十人が助けようが、今夜、彼女たちは死ななければならない!自分でどうにかしろ!」

相手はバンと電話を切った。耳の切れた男は呪いの言葉を吐いた。「くそっ、俺に向かって電話を切りやがって。お前が金を払うからこそ我慢してやってるんだ。そうでなきゃ、こんな嫌な思いなんてしねぇよ!」

「兄貴、どうしましょう?!」

「どうもこうもない。ボスの命令だ。今夜、あの母娘をこの海域から生きて出すわけにはいかない。下に魚雷を二発隠してるだろう?あのヨットごと爆破しろ!あの二人の若者も運が悪かったな…」

……

同じ時刻、高橋天音は寝室で相手と電話をしていた。

「何ですって?助けられた?こんな遅くに誰が彼女たちを助けに行ったの?あなたが頼んだ人はとても信頼できると言ったじゃない。一体どうなってるの?!こんな失態を!」

天音は眉をひそめて不機嫌に尋ねた。