第104章 佐藤お坊ちゃんが自ら妻に靴を履かせる

佐藤陸はかがみ込み、地面を手探りして今田由紀が履く靴を準備した。由紀はその光景を見て、目が熱くなり瞬きをした。感動の涙がその場で流れ出さないようにするのがやっとだった。

彼女は陸の体を抱きしめ、彼の額にキスをして笑いながら言った。「陸兄さん、愛してる!仕事行ってくるね!」

愛してる?!

陸はこの突然の言葉に驚き、一瞬反応できなかった。幸せがあまりにも突然訪れ、彼は心の準備ができていなかった。

彼が我に返った時には、目の前の小娘はすでに飛び出していた。陸は手を伸ばして携帯で警備員に電話をかけた。「彼女について行け、気づかれないようにな!」

「はい、社長!」

……

東方テレビ局はマンションからそれほど遠くなかった。由紀はお金を節約するために、バスに乗って行った。

たった二駅で到着し、彼女はバスを降り、威厳のあるテレビ局の前に立つと、全身の血液が震えるのを感じた。

ここが彼女がこれから働く場所だ。彼女は拳を握りしめ、微笑みながら心の中で自分を励ました。「今田由紀、頑張れ、由紀、頑張れ!」

新人として、由紀がテレビ局の一階ロビーに入ると、少し戸惑ってしまった。

どこに報告すればいいのか分からず、受付に尋ねようとしたところ、向こうから30代くらいの若くてきびきびした女性が歩いてきて、微笑みながら尋ねた。「あなたが今田お嬢様ですね?」

「あ?はい...こんにちは、今田由紀と申します。今日からここに配属された実習生です。あなたは?」

「ああ、私のことは邢主任と呼んでくれればいいわ。あなたたち実習生の配属は私が担当しているの。ここは部署がたくさんあるけど、あなたはエンターテイメント部門に配属されたわ。これからは私について来て、まずは部署の基本を理解しましょう!」

「はい、邢主任!」

由紀は邢主任の親切な案内と紹介のもと、順調に東方テレビ局のエンターテイメント部門に入った。

この部門は、スターや有名人、成功者を発掘してインタビューする部署だ。簡単に言えば、パパラッチとほぼ同じような興味を持ち、エンターテイメント界の最新の内部ニュースをいち早く掴むことが仕事だった。

由紀は新人として、実習生の立場から最も下層の実習記者として仕事を始めることになった。これは細田次郎が電話で事前に指示していたことだった。