佐藤陸は尋ねたかった。彼と一緒にいて今田由紀は本当に幸せなのか、この数日間の二人の温かい時間も、結局は彼女の心に三年も根付いたあの人には敵わないのか?!
「奥様、着きました!」
東方テレビに到着し、由紀は陸の膝から起き上がり、手で少し乱れた髪を適当に整えた。
陸には見えないと知っていたので、まだ落ち込んだ表情を隠し切れていなかった。陸の方を振り向くと、彼はさっきと同じ姿勢で動かずにいた。
由紀は彼のその様子を見て少し後ろめたく感じ、様々な感情が交錯した。
彼女は榎本剛についての過去を思い出したくなかった。この期間、陸と過ごす中で、彼が自分をとても大切にし、寛容に接してくれることを知っていた。
彼女はそれに感動し、愛していると言い、好きだとも言った。でも…
彼女の心に三年も埋まっていたとげはまだ存在していた。意識して思い出したくはなかったが、それに触れるたびに胸が痛み、息ができないほどだった。
彼女は剛を呪い、皮肉ることはできても、心の中では三年間執着した感情に悲しみを感じていた。
彼女は陸兄さんを喜ばせたかった。彼が毎日楽しく過ごせるようにしたかった。
彼は彼女を助け、困難を解決し、さらに剛のもとから連れ出して幸せで温かい家を与えてくれた。
彼女はそれをすべて知っていた。でも由紀はどうしても気になってしまう。こんなに素晴らしい陸兄さんが、もしいつか目が見えるようになって、彼女のこの姿を見たら、本当にまだ好きでいてくれるだろうか?
彼女は彼がしてくれたことすべてに感謝できる。しかし彼が自分を見ることができるようになるまでは、もう一度自分の真心を男性に託す自信がなかった。
たとえその男性が彼女を溺愛してくれていても!
彼女は陸がいつか後悔することを恐れていた。その時、彼女が彼の心の中の完璧な彼女ではなく、こんなに不器用で何もできず、世渡り下手で、人付き合いが下手で、どうやって人に好かれるかも分からない彼女だと分かったら。
だから彼女はとても怖かった。陸兄さんに真心を託して、陸兄さんが彼女を望まなくなったら、どうすればいいのか?!
これらのことは彼女がずっと心の奥底に隠し、誰にも言わなかった。彼女には自覚があった。陸の体調が回復するまで世話をして、もし陸が彼女は自分に相応しくないと思ったら、彼の邪魔はしない、必ず去るつもりだった。