第171章 小悪女の妹がまた来た

高橋美奈は目の前で見ているものをまったく受け入れられなかった。

この誘拐事件を経験した後、本来なら怖くて家に閉じこもり、外出もできず、見知らぬ人を見れば震えて叫び、生きる意欲もなくなっているはずの今田由紀が、こんなにも堂々と彼女の兄の手を握っているなんて?

それに、あの高慢で冷淡、几帳面で威厳のある兄が、どうして今こんな場違いな格好をしているの?

彼が手に持っているのは何?!

なんてこと!

自分の目が見間違えているに違いない、これは何を見ているの?!

兄が手に持っているのはドリアンの袋だった。兄が最も嫌いな果物はドリアンで、栄養価は高いものの、あの匂いはまったく耐えられないはずなのに。

「お兄さん...あなた...」

美奈は佐藤陸を見ると、隣の由紀をにらみつけ、彼に近づいていった。

陸に近づくと、彼から漂うドリアンの匂いに耐えられず、数歩後ずさった。

なんて嫌な匂い!

彼女は眉をひそめ、唇を固く結んで、近づきたいのに、あの嫌な匂いのせいで近寄れなかった。

由紀は美奈を見ると、目を細め、まるで尻尾を踏まれた猫のようだった。

途端に不機嫌になった!

彼女は指で陸の手のひらをなぞりながら、意地悪そうに言った:「陸兄さん、あなたの妹がまた会いに来たわよ!外で話すの?それとも私たちの家に招待する?」

美奈が前回の教訓を受けても、まだ陸兄さんに会いに来るとは思わなかった。

今回は美奈の正体を知っていた。彼女は陸の実の妹ではなく、陸もこの女性を嫌っていた。

しかし、この女性が何度も陸に近づこうとするのを見て、由紀はどんなに鈍感でも、美奈の目に映る陸への欲望を見抜いていた。

彼女は陸兄さんを好きなのだ!

彼女は確信していた。

この女性の母親は第三者として陸の家庭を壊した。そして、その娘も母親を見習って、彼女と陸の関係を壊そうとしている。

ふん!

由紀は鼻で冷たく笑い、陸の手を離さなかった。