硬かった心が、急に柔らかくなった。
しかし、彼女に散々な目に遭わされたことを思い出すと、怒りが再び湧き上がってきた。
「わざとじゃないって、服もシワにしたじゃないか、弁償してもらおうか……」彼は怒りを抑えながら、歯を食いしばって言った。
初陽は小さくため息をついた。
「はぁ……あなた、大の男がそんなにケチなの?初めて会った時からそうだったけど、もう三度目の今日くらい、紳士的な態度で私に礼儀正しく優しくしてくれてもいいんじゃない?」
黒川源の大きな体が少し震えた。その熱気は魔法のように全身に広がっていった。
一瞬で、全身の血液が沸騰し、心臓は雷のように鼓動した。
彼女の少し非難がましくも、甘えた口調が源には心地よかった。
「お前に対しては、俺はこれくらいケチなんだ。一昨日は俺をからかったな、今日はその損害と、このシャツの分も含めて弁償してもらうよ?」少し揶揄するように、彼は眉を上げ、唇を曲げて低く笑った。
悪意のある笑み。
初陽は眉を跳ねさせ、一瞬で驚いた。
「あなた……何をするつもり?」
「もちろん、俺の博愛精神を発揮するんだよ。お前が抜けていたら、博愛とは言えないだろう。今日はこのシャツの分も含めて、一緒に返してもらおうか?」
初陽は目を閉じて心の中で悲鳴を上げた。全身の力が抜けた彼女は、今まな板の上の魚のようで、このまま源に好きにされてしまうのだろうか?
因果応報、報いは必ず来る。彼と彼女の駆け引きは、まだまだ終わっていなかった。
初めて彼はこんな狡猾な狐のような女性に出会った。彼はいつも狼であり、狡猾で捕まえにくい獲物を飼いならすのが大好きだった。
もがけば、抵抗すればするほど、彼の征服欲をかき立てるだけだった……
「私、星野寒と付き合ってるんだけど、知らないの?」初陽は頭がひどくクラクラしていたが、彼の強引さに対抗する術がなく、仕方なく寒の名前を出した。
すると、源は嘲笑うように、非常に愉快そうに笑った。
「知ってるさ。だから今日来る前にボスに電話して、お前を口説きたいって正直に言ったんだ。どう答えたと思う?」
初陽は固まり、顔を上げて源の視線と目を合わせた。
「何て言ったの?」
彼女はこの言葉がどうやって口から出たのか分からなかった。ただ声がかすれ、喉が痛くて仕方なかった。